おつまみやお菓子などでおなじみのナッツ。食用の歴史は案外古く、紀元前までさかのぼることができます。小さいけれど栄養価が高く、健康的な食材です。
秋は、栗やぎんなん、落花生などの木の実が美味しい季節だ。これら木の実は堅果類と呼ばれ、種子の中の仁(胚及び胚乳)が肥大して食用となったもの。果皮は薄くて固いのが特徴だ。「ナッツ(Nuts)」という言葉は本来この堅果類を指している。
では、かぼちゃの種や蓮の実は何と呼ぶのだろうか?こちらは種子類(Seeds)といい、文字通り果実以外の植物の「種」のこと。
慣習的には堅果類と種子類の総称を「ナッツ」と呼んでいる。主菜として用いられることは少ないが、おつまみやお茶うけなど、ちょっとした時にあると嬉しいナッツ。いろいろな栄養素が含まれ栄養価の高い食材でもある。
ナッツと人類の関わりはかなり古く、もともと貴重な保存食であり、神事や祭事に使われる供物だった。
例えばクルミ。紀元前7000年頃から人類が食用としていた最古のナッツと言われ、原産地のイランから地中海を渡りヨーロッパに伝えられたとされている。紀元前のエジプトでも国王の墓には必ず棺の中にクルミなどのナッツ類が供えられていたという。 アーモンドの起源も古く、4000年以上前、地中海沿岸のヨルダン地方が原産地と考えられているが、その後世界中で広く栽培されるようになり、中世頃までは王侯貴族や上流階級の人々の高級嗜好品だった。
もちろん日本でもナッツは欠かせない食材で、縄文時代からドングリやトチの実、栗、クルミなどを食べていた。縄文時代の保存食として「縄文クッキー」があるが、この成分を分析すると、ニホンシカやイノシシなどの肉に栗やクルミなどのでんぷん質を加え、野鳥の卵の材料に塩と野生酵母を加え200~250℃で焼いたものであったそう。栄養価も高く、優秀な保存食だったようだ。
時代が下って船で外国に出かけられるようになると、日本原産でないナッツ類もどんどん上陸してくるようになる。クルミの上陸は豊臣秀吉の朝鮮出兵がきっかけだとされているし、アーモンドが上陸したのも案外古く、江戸時代にポルトガル人が持ち込んだのが最初と言われている。アーモンドの粒は扁平なことから和名は「扁桃」。咽頭部の両側にあるリンパ組織の形が似ていることから「扁桃腺」の語源となった。
「脂っぽいから…」「カロリーが高そう」と敬遠されがちなナッツ。確かにナッツは種子植物として発芽し、幼植物期の発育に必要な栄養分を蓄えているため脂質も多い。しかし、一方でたんぱく質やビタミンなども豊富に含まれ、非常に栄養価の高い食品なのだ。ぜひ、ナッツの実力を見直してほしい。