疾患・特集

今から考える「骨対策」!あなたの骨、お元気ですか?

骨粗しょう症は高齢者の病気というイメージが強いと思いますが、むしろ若いうちからのケアが大切。今回は、骨粗しょう症についてご説明します。

壊して作る!?骨の成長のしくみ

日頃、滅多にお目にかかることのない自分の骨。あなたは骨についてどんなイメージを持っているだろうか。
「骨といえばカルシウム!」と答える方も多いはず。その通り、骨は「カルシウムの銀行」とも呼ばれ、体内にあるカルシウムのなんと99%を貯蔵している。カルシウムはおよそ1兆個もある私たちの体の細胞のはたらきを司るもので、常に血液中に一定の量を保って存在している。カルシウムは体内で合成することができないので、食べ物から摂るしかないのだが、もしカルシウムが体内に入ってこない場合、骨は自らのカルシウムを血液中に溶かしだし濃度を一定に保とうとする。カルシウムが引き出される一方だと、骨はやがてもろくスカスカになってしまう。やはり骨とカルシウムは切っても切れない関係にあるのだ。

骨の成長

「身長の伸びが止まったら、骨の成長も終わるんじゃないの?」そう考える方もいるかもしれない。しかし、あなたの骨だって今も新陳代謝を繰り返している。「破骨細胞」が古くなった骨の成分を溶かして破壊し(骨の吸収)、「骨芽細胞」が骨の表面にたんぱく質のコラーゲンを分泌、その上にカルシウムを定着させてゆく(骨形成)。

吸収と形成のバランスがとれている状態が理想だが、何らかの理由で吸収の方のはたらきが強くなると骨の破壊が進み、骨折しやすくなってしまった状態が「骨粗しょう症」なのである。

圧倒的に女性に多い骨粗しょう症

グラフ:加齢によって変化する骨密度の様子

加齢によって変化する骨密度の様子をグラフにしてみると、女性の場合は50歳前後の閉経期の後、急激に下降しているのがわかる。それに対して男性は年齢とともになだらかなカーブを描いて下降している。これは女性の骨と女性ホルモンとが大きく関わっていることを示している。

思春期以降の女性の骨を丈夫にする役割は女性ホルモンであるエストロゲンが担っている。骨密度とエストロゲンはほぼ同じリズムで変化し、40代以降エストロゲンの分泌低下と同時進行で骨からカルシウムがどんどん抜けてもろくなってゆき、閉経でエストロゲンの分泌が決定的に低下すると、骨密度も急速に減少してしまうのだ。この時期に無理なダイエットをすることは骨にかなりのダメージを与えることになる。

さらに、一般的に女性の骨は男性に比べて細いことからカルシウム量がもともと少なかったり、食が細かったりするのでカルシウムを十分補えないことや、妊娠してお腹の赤ちゃんにカルシウムを渡したりすることもある。女性の体は男性に比べ、骨にとっては何かと不利なのだ。
閉経期以降の50歳代の女性の3割が、60歳代では5割が、70歳以上では約7割が骨粗しょう症にかかっているという報告もある。

男性には関係ないの?

骨粗しょう症のリスクは女性にばかりあるのだろうか?もちろん、男性も加齢に伴い骨密度は低下してくるので、骨粗しょう症の危険性はないわけではない。「男だから大丈夫」などと安心せず、毎日の生活習慣や食生活に気を配ることが大切だ。

骨粗しょう症がコワイ理由

骨粗しょう症がコワイのは、転倒した場合、寝たきりにつながるような深刻な骨折をおこす可能性があることだ。寝たきりはさらに認知症を招きやすく、そうなると日常生活を自力で行うことすら厳しい状況になってしまう。
骨粗しょう症による典型的な骨折は、腰や背中(脊椎)、足の付け根(大腿骨頸部)、手首などにおこる。

骨粗しょう症による典型的な骨折 骨粗しょう症による典型的な骨折

  • ●腰や背中の骨折(脊椎の圧迫骨折)
    日本人の場合、骨粗しょう症による脊椎の圧迫骨折の割合が多い。痛みなど自覚症状がないので放置してしまいがち。コルセットで患部を固定し、投薬で治療していく。
  • ●足の付け根の骨折
    一番治すのが大変な部位。歩行困難により、そのまま寝たきりの原因にもなりかねない。手術、リハビリを経て少しずつ歩くことができるようになる。
  • ●手首
    手術をして治すケースと、手術をせずに治すケースがある。

見逃すな!骨粗しょう症サイン

自覚症状がない骨粗しょう症。こんな症状が骨粗しょう症のサインだ。気付いたら早めに対策を立てるべき。

骨粗しょう症のサイン

  • ●背中や腰の痛み
  • ●背骨の曲がり
  • ●身長の低下
  • ●呼吸困難、食欲不振、胃もたれなど(背骨の変形により、内臓を取り囲む骨格に悪影響を及ぼすため)
公開日:2002年9月24日