疾患・特集

どうして忘れるの?ど忘れは脳の危険信号!?

誰でも経験のある「ど忘れ」。初めのうちは「なんだっけ…、そうそう!あれだよ」なんて思い出せていたのに、だんだん思い出せなくなってきていませんか?ど忘れを「歳のせい」なんて思っていると、取り返しがつかなくなるかもしれません。

ど忘れとは?

ど忘れとは、辞書によれば「当然知っているはずのことなのに、どうかした拍子に思い出せなくなる」こと。つまり、脳の記憶にエラーが起こった、ということだ。
誰にでも、「えーっと、あれなんだっけ…」という経験はあるはず。それがたまになら誰も気にしないが、あまりに続くと「最近、物忘れが激しい」となり、「どこか悪いんじゃないか」と気になってくる。本人は、「忘れるはずじゃない」と思っていたことなだけに、「ど忘れ」するとショックを受けてしまうのだ。

あなたは、こんな経験がないだろうか?

1. 以前にも話したことを同じ人に話したとき

  • A:言われれば、前にも話したことを思い出す(「そう言えば、前にも話したっけ…」)
  • B:言われても、覚えていない(「えっ?もう話したっけ?」)

2. 約束していたのを忘れてしまったとき

  • A:約束は覚えていたけど、その時は忘れてしまった(「あーっ、約束してたんだった…」)
  • B:約束したこと自体覚えていない(「そんな約束したっけ?」)

3. 何かやろうとしたことを忘れてしまったとき

  • A:よく考えてみれば、思い出す(「あれをするんだった!」)
  • B:まったく忘れてほかのことをしてしまう(「何かしようとしてたかしら?」)

こんな場面で、Aのような回答なら、そう心配はない。でも、もしBのようなことがあなたに起こっているなら、それは注意が必要など忘れなのだ。

記憶のメカニズム

脳

さて、人はどのように物事を記憶しているのだろうか。
人の記憶にとって大切なのは、五感。これが、脳への情報の入り口になっているからだ。
五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のこと。そのなかでも、視覚、聴覚からの情報は膨大であり、それを処理する脳の部分も容積的に大きな量を持っている。

記憶には、「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3種類ある。

記憶のメカニズム

  • ●感覚記憶
    脳の感覚中枢(視覚中枢や聴覚中枢、体性感覚中枢など)が正常にはたらき、外部からの情報を処理したときに得られる記憶。年齢が高くなると、視覚、聴覚の反応が鈍るため脳が得られる情報が減り、脳も鈍くなった、と言われる。
  • ●短期記憶
    短期的な記憶。昨日言われたことを覚えている、など。脳の海馬という場所に短期記憶の中枢がある。これ(海馬を含む側頭葉)がダメージを受けると、外から来た新しい情報が処理されないため、繰り返し同じことを言ったり、すぐ前のことを記憶できなかったりする。が、ほかの部分がダメージを受けていなければ、長期的な記憶は残っている。
  • ●長期記憶
    長期的な記憶。つまり、昔から長く残っている記憶のこと。ただし、短期記憶を繰り返し、繰り返し貯蔵することで、長期記憶になる。

この3つには関係がある。外部からの情報をまず、感覚中枢がキャッチし、感覚記憶となってとらえられ、それが短期記憶になる。これを繰り返すことで長期記憶になる、と言うわけだ。

記憶のメカニズム

なぜ、忘れるの?

脳に入ってくる情報には、大きく分けて2種類ある。
ひとつは、能動的な情報。自分が見たい、聞きたいと思って、積極的に受信しようとするものだ。もうひとつは受動的な情報。例えば、学校の授業など、それほど興味がない(?)ものがそうかもしれない。
このうち、受動的な情報は、あまり覚えていない。興味のないことは、いくら耳で聞いて目で見ても、なかなか記憶としては残らないのだ。さらに、覚えているためには、「努力」が必要である。どんなに関心があることでも、努力しなければずっと覚えていることはできない。

つまり、「感覚記憶」を「短期記憶」にするためには、まず五感を有効にはたらかせ、情報に対し能動的である必要があり、さらに「短期記憶」を「長期記憶」にするためには、繰り返し行動することが必要なのである。

公開日:2001年11月26日