疾患・特集

レビー小体型認知症はもの忘れが現れる前に早期発見を

レビー小体型認知症は「認知症」と名前がついていますが、アルツハイマー型認知症とは異なる特徴をもった病気です。早期発見につなげるため、具体的な症状や誤診されやすい病気について、レビー小体型認知症の発見者である小阪憲司先生(クリニック医庵センター南・横浜市立大学名誉教授)にお話を伺いました。

「認知症は、もの忘れの病気」という誤解

――レビー小体型認知症の主な症状はやはり「もの忘れ」ですか?

アルツハイマー型認知症の印象から、認知症というと「もの忘れの病気(記憶障害)」と誤解されがちです。しかし、レビー小体型認知症ではもの忘れ以外の症状のほうが先に現れ、目立つことがよくあります。

――具体的には、どのような症状がありますか?

まずは、幻視(げんし:誰もいないのに子供が見える、天井が落ちてくるなど実際にはないもの、起こっていないことが見える)や錯視(さくし:ハンガーにかかった服が人に見えるなど、見間違いをする)、変形視(天井が波打って見えるなど、物が変形して見える)などの、視覚認知障害です。
眠りながら、恐い夢を見て大きな声で寝言を言う、足をバタバタと動かす、壁をたたく、などの異常な言動が現れる、レム睡眠行動障害が起こることもあります。
また、うつ病のような気分の落ち込みやゆううつ感(うつ症状)などもみられ、集中力や自発性の低下も伴います。
自律神経症状(下表)や、臭いがわからなくなる嗅覚障害も代表的な症状です。

レビー小体型認知症で現れる主な自律神経症状

  • 便秘
  • 起立性低血圧(立ちくらみ)
  • 発汗障害(多汗/無汗)
  • 頻尿
  • 手足の冷え
  • めまい

…など

さらに、パーキンソン病のような筋肉のこわばりや手のふるえ、小またで歩く、転びやすいといったパーキンソン症状も特徴的な症状です。レビー小体という物質によって引き起こされるレビー小体型認知症は、同じ原因で起きるパーキンソン病や認知症を伴うパーキンソン病とともに、「レビー小体病」と総称されています。

うつ病や統合失調症などに誤診されることも…

――病気が進行すると、症状に変化はみられますか?

病気が進行すると、症状に変化はみられますか? 最初はもの忘れがみられなかった人も、病気が進行してくると、やがてもの忘れが目立つようになります。歯みがきやテレビのリモコンの扱いなど、いままでできていたことが、できなくなることもあります。
レビー小体型認知症は、医師の間でもまだ十分に知られていない病気のため、実際はレビー小体型認知症でありながら、誤診されてしまうことがよくあります。

――どのような病気と誤診されるのですか?

うつ症状がある人はうつ病、幻視や幻聴、妄想がある人は統合失調症など、それぞれの特徴的な症状に関係した病気(下表)と誤診されることがよくあります。自律神経症状に代表されるように、全身に症状が現れる病気でありながら、「認知症」という名前がついているのも、誤診されやすい理由の一つでしょう。正しく診断されていない人や、まだ受診をしていない人をあわせると、レビー小体型認知症は、認知症患者さん全体の約2割を占めるといわれています。

これらの病気と
誤診されているかも…?

  • アルツハイマー型認知症
  • うつ病
  • 統合失調症
  • 老年期精神病
  • パーキンソン病

…など

――誤診された病気の治療を受けていても、レビー小体型認知症は改善しますか?

誤診されたままでは、レビー小体型認知症の正しい治療を受けられていないので、改善は期待できません。むしろ、用いる薬の影響で症状が悪化してしまう恐れもあります。正しい治療を早く始めるために、もの忘れが現れていない早期のうちに発見することは、とても大切です。発見するのが早ければ早いほど、病気の進行を抑え、症状が悪化するのを防ぎやすくなります。

進行を遅らせるには、できるだけ早く専門医に診てもらうことが大切

――早期発見のためには、どうすればよいですか?

レビー小体型認知症の症状に気づきやすいのは、患者さんと接する機会が多いご家族の方です。ご家庭に高齢の方がいる場合は、日頃から様子を注意して観察し、レビー小体型認知症が疑われる症状があれば、早めに医療機関で診てもらいましょう。

――受診すると、どのような検査を受けることになりますか?

もっとも大切なのは、症状などを把握するための問診です。また、必要に応じて脳の画像検査(CT、MRI、SPECT、ダットスキャン®)や、心臓の画像検査(MIBG心筋シンチグラフィ)、認知機能の検査などを行います。しかし、これらの検査はあくまで診断のための補助として行うものであり、検査だけでレビー小体型認知症と診断することはできません。重要なのは、やはり問診です。

――どの診療科で診てもらえばよいですか?

一般的に、認知症を診てもらえるのは、精神科や神経内科、脳外科、老年科などです。しかし、それらの診療科の医師全員が、必ずしもレビー小体型認知症を詳しく知っているとは限りません。インターネットや書籍で、レビー小体型認知症の専門医を調べて診てもらうのが、早期発見のための近道だと言えます。

ご家族へのメッセージ

レビー小体型認知症では多くの場合、もの忘れの症状が現れるのは、病気がある程度進行した後です。そのため、もの忘れが現れる前の早期の段階で発見できれば、病気の進行を遅らせることができ、介護するご家族の負担も軽減されます。
ご家族に日ごろとは違うおかしな言動がある場合や、気になる症状がある場合、誤診が疑われる場合は、できるだけ早く、迷わずにレビー小体型認知症の専門医に診てもらいましょう。

公開日:2016年8月8日