疾患・特集

レビー小体型認知症とは?

認知症の中で2番目に多いのに、認知症と診断されていないことも…

認知症と聞いてほとんどの人が思い描くのは、「もの忘れの病気」というイメージではないでしょうか。これは、記憶障害が主な症状である、アルツハイマー型認知症の印象が強いためだと考えられます。

認知症の種類と割合

実際には、アルツハイマー型以外の種類の認知症もあります。原因などをもとにして分類されたその数は、実に70種類ほど。アルコール中毒やエイズなどが原因のものなどさまざまですが、患者数が特に多いのは、「三大認知症」と総称される次の3つです。

  • (1)アルツハイマー型認知症
  • (2)レビー小体型認知症
  • (3)脳血管性認知症

アルツハイマー型が認知症全体の50%を占めますが、それに次いで多いのが、20%を占めるレビー小体型です(文献1)。アルツハイマー型では、記憶障害や、判断力・理解力の低下といった症状が、分かりやすい形で現れます。それに対してレビー小体型では、初期から中期にかけて、記憶障害はあまり目立ちません。そのためレビー小体型認知症は、発見が遅れやすいだけでなく、「認知症はもの忘れの病気」という印象が強いせいで、認知症という診断すらされていない場合もあります。

認知症とは

脳の神経細胞が壊れることによって生じる病気です。だんだんと進行し、記憶障害、判断力や理解力の低下などが起こります。やがて、時間や場所が分からなくなり、会話や計算ができなくなるなどして、日常生活に支障をきたすようになります。

認知症における記憶障害とは

物事の記憶が、まるごと消えてしまうような障害です。例えば、朝ごはんのメニューが思い出せないのは単なるもの忘れで、朝ごはんを食べたこと自体を忘れるのが、認知症における記憶障害です。

パーキンソン病と同様、脳に現れるレビー小体が原因

パーキンソン病と同様、脳に現れるレビー小体が原因

脳の容量が小さくなる「萎縮」によって、症状が現れる認知症がアルツハイマー型認知症です。それに対して、レビー小体という物質が脳全体に広がって起きるのが、レビー小体型認知症です。このレビー小体が、主に脳幹という場所に現れると、パーキンソン病という病気になります(文献1)。したがって、レビー小体型認知症とパーキンソン病は、本質的には同じ病気だと考えられています。

レビー小体型認知症は、初期から中期にかけて記憶障害があまり目立たないため、医師も認知症と診断することをためらう傾向があります。その結果、実際にはレビー小体型認知症でありながら、パーキンソン病と診断され、認知症の治療が遅れてしまうケースは少なくありません。

パーキンソン病とは

神経難病の一つです。神経難病とは、神経の病気の中で、はっきりとした原因や治療が分かっていないものです。「手足のふるえ」「筋肉のこわばり」「ゆっくりとした動作」「前かがみの姿勢」「小刻みな歩行」「転びやすい」といった症状(パーキンソン症状)が現れます。

アルツハイマー型認知症の病変があるかどうかで、2種類に分類

レビー小体型認知症は、発症する年齢や初めに確認された症状、脳の中にアルツハイマー型認知症の病変があるかどうかによって、以下の2種類に分けられます(文献1)

発症年齢 初発症状 脳の中のアルツハイマー型病変
通常型 70歳ぐらい 記憶障害 あり
純粋型 40歳ぐらい パーキンソン症状 なし

通常型は高齢者に多く、約30%の人は最後までパーキンソン症状がみられないという統計もあります。そのため、実際にはレビー小体型認知症でありながら、アルツハイマー型認知症やうつ病、老人性精神病と診断されていることが少なくありません。純粋型は、約80%の人に初めにパーキンソン症状がみられます。そのため、パーキンソン病と診断されることが多くあります(文献1)。

レビー小体型認知症は、正しい診断を行うのが難しい病気です。この病気に関する知見・技術をもった専門の医師を、早く見つけることが何よりも大切です。

(参考資料)
  • 文献1:『レビー小体型認知症の介護がわかるガイドブック』(メディカ出版)
  • 文献2:『知っていますか?レビー小体型認知症』(メディカ出版)
公開日:2016年8月8日