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双極性障害の症状チェック

本当は双極性障害なのに、うつ病と診断されていることもあります。うつ状態のとき、躁状態のとき、双極性障害の症状をチェック。

本当は双極性障害なのに、うつ病と診断されていることも…

双極性障害の人は、うつ状態が比較的長いため躁状態に気付かれず、うつ病と診断されていることが多くあります(文献1)(文献2)(文献3)うつ病だと診断された人のうちの約10人に1人が、実際には双極性障害との報告もあります(文献3)。双極性障害では、うつ状態と躁状態の正反対の症状が同時に起きる「混合状態」になることもあります(文献2)(文献3)。次の症状が、ある一定の期間、またはずっと続いていないか、チェックしてみましょう。
症状の中には、周囲の人のほうが気付きやすいものもあります(文献1)(文献2)。本人だけでなく、客観的に見ることができる家族が「以前と違う」と感じるところがないかをチェックすることも勧められます。

双極性障害の主な症状

うつ状態のとき

  • 【1】一日中憂うつで、落ち込んだ気分になる
  • 【2】今まで楽しめていたことが楽しめない
  • 【3】食欲の増加・減少や、体重の増加・減少がみられる
  • 【4】眠れない、早くに目が覚める、寝すぎるなど、睡眠に問題が生じる
  • 【5】話し方や動作が鈍くなる、またはイライラして落ち着かない
  • 【6】何をするにも、おっくうに感じて、やる気が出ない
  • 【7】自分には価値がないように思えて、自分のことを責める
  • 【8】物事に集中できなくなり、決断することができない
  • 【9】死にたい、消えてしまいたいと思うようになる …など

うつ状態のとき

躁状態のとき

  • 【1】以前と違ってハイテンションで、調子が良いと感じられ、怒りっぽくなる
  • 【2】自分は偉い存在だと思う
  • 【3】以前よりおしゃべりになり、とめどなく話し続ける
  • 【4】アイデアが次々と思い浮かぶ
  • 【5】注意力が散漫で、一つのことに集中できない
  • 【6】以前より行動的で、落ち着きがなくなる
  • 【7】不相応に高額な買い物など、無謀と分かりきったことに熱中する …など

躁状態のとき

出典:『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』(医学書院)

ほかにも、次のような症状がみられることがあります(文献1)(文献2)

うつ状態のとき

  • 不安や恐怖の気持ちが強くなる
  • 疲れがとれにくい
  • 考えがまとまらない
  • 不安や恐怖の気持ちが強くなる
  • 以前より仕事の能率が悪い
  • あまり話さなくなる
  • 疲労感や体調不良(頭痛、肩こり、吐き気など)を訴える
  • 身だしなみに気をつかわず、だらしなくなる …など

躁状態のとき

  • 自分はなんでもできると思う
  • 周囲の人より自分のほうが優れていると感じる
  • 爽快で、幸せな気分になっている
  • 自信に満ちあふれ、やる気がある
  • 眠りたいと思わず、ひと晩中活動しても平気
  • 陽気で、冗談をよく言い、よく笑う
  • 無謀な計画を立てる
  • 陽気で、冗談をよく言う
  • 特におもしろいことがなくても、よく笑う
  • 高圧的な態度をとり、人と衝突することが増える …など

統合失調症や境界性パーソナリティ障害と似ている点とは?

うつ病のほかにも、双極性障害と似た症状が現れる精神疾患があります(文献1)(文献2)。いずれの場合も症状がまぎらわしく、一度だけの診察で正しく診断するのは困難だと言われています。専門医の下で、継続的に診察を受けることが勧められます。

■統合失調症

陽性症状(幻覚、妄想など)と陰性症状(感情が乏しくなる、意欲が低下するなど)という二面性がある点や、誇大的な話をする点、興奮状態になる点などが似ています。

■境界性パーソナリティ障害

人から見捨てられることへの恐怖感や、空虚感があることを除いて、衝動的な言動がみられる、イライラして激しく怒ることがある、不安な気持ちになるなど、多くの共通点がみられます。

家族へのアドバイス

双極性障害の症状の中には、本人より周囲の人のほうが気付きやすいものがあります。特に躁状態の症状は、本人に病気の自覚はなく、むしろ調子が良いとさえ思っている可能性があります(文献1)。思い当たる症状があるときは、受診を勧めてみましょう。場合によっては、まずは家族だけで医師に相談してみても良いでしょう。

参考資料:
文献1:『双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本』(講談社)
文献2:『よくわかる双極性障害(躁うつ病)』(主婦の友社)
文献3:『双極性障害(躁うつ病)とつきあうためにVer.6』(日本うつ病学会)
文献4:『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』(医学書院)

監修医:
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 総長 樋口 輝彦 先生
九州大学大学院 医学研究院 精神病態医学分野 教授 神庭 重信 先生

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公開日:2017年1月10日