気分の落ち込み・感情の高ぶりの波が大きい「双極性障害」とはどのような病気なのでしょうか。
双極性障害は、気分が高揚し、活動が増える「躁状態」と、落ち込んで、やる気が失せてしまう「うつ状態」という対極にある状態が繰り返し現れる(気分の波)精神疾患です。うつ病が、うつ状態のみがみられる「単極性」であるのに対して、うつ状態と躁状態の両方があることから「双極性」と名付けられました。かつては「躁うつ病」と呼ばれていた病気です。躁状態の激しさに応じて、I型とII型に分類されます。
激しい躁状態がみられます。周囲の人に高圧的な態度をとったり、高額の買い物により借金を抱えたりして、仕事を失う、家庭が崩壊するといった社会的な問題が起きやすくなります。
躁状態がI型のようにはっきりとは現れず、「軽躁状態」と表されます。そのため、躁状態が見逃されやすい傾向があります。
双極性障害がなぜ起きるのか、はっきりした原因はまだよく分かっていません。しかし、次のような要因が複雑にからみあい、発症に至ると考えられています。
躁状態の人は、それが病気の症状とは思わず、調子が良いとさえ感じるため、自分から通院することはまれです。うつ状態のときに通院しても、躁状態について医師に伝えず、うつ病と診断されることも多くあります(文献1)(文献2)(文献3)。うつ病と双極性障害では、治療に用いる薬が異なるため、うつ病と診断されたままでは、正しい治療を受けられない可能性が高くなります。
双極性障害は最悪の場合、自らの命に手をかけかねない病気であり、早期に正しく診断され、治療を受ける必要があります(文献4)。できるだけ早く正しい治療を受けられるように、精神科や神経科などで専門医に診てもらうことが大切です。
双極性障害の患者さんに対する家族の接し方は、病状に少なからず影響を及ぼすと考えられます。発症の原因探しをして根拠なく問いつめる、病気に対して偏見をもつといった態度は、患者さんを苦しめることになります。毎日つきっきりで世話を焼いたり、こまごまと口出ししたりせず、かといって患者さんと同じように興奮して言い合いをしたり、腫れ物に触るような扱いをしたりせず、患者さんとはほど良い距離感で自然に接することを心がけましょう(文献1)(文献2)(文献3)。
参考資料:
文献1:『双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本』(講談社)
文献2:『よくわかる双極性障害(躁うつ病)』(主婦の友社)
文献3:『双極性障害(躁うつ病)とつきあうためにVer.6』(日本うつ病学会)
文献4:『みんなのメンタルヘルス総合サイト 双極性障害(躁うつ病)』(厚生労働省ホームページ)
監修医:
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 総長 樋口 輝彦 先生
九州大学大学院 医学研究院 精神病態医学分野 教授 神庭 重信 先生
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