疾患・特集

正しく理解できていますか?喘息とアレルギーの関係

監修:昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科部門教授 足立 満 先生

どうして起きる?アレルギーが原因の喘息

私たちの体には、体内に侵入したハウスダスト、ダニ、ペットの毛などの異物を排除して、自分を守ろうとする免疫という仕組みが備わっている。アレルギー反応とは、これらの異物の侵入によって、何らかの症状が起きることを指す。免疫において異物は「抗原」と呼ばれるが、アレルギー反応を引き起こす場合は特に「アレルゲン」と呼ばれる。

アレルゲンが侵入したときに体内にできるのが、「IgE抗体」という物質。IgE抗体が「マスト細胞」(肥満細胞)に結合し、そこにアレルゲンが再び体内に入ってきて、マスト細胞に結合したIgE抗体の上にアレルゲンがくっつくと、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が放出される。それらの化学物質の働きで、アレルギー反応として気道は炎症が発生して狭くなり、正常に空気が通り抜けなくなることで、喘息による喘鳴や咳、そして発作が起きる。

こうして引き起こされた喘息は、気道の炎症を抑える吸入ステロイドを中心に使用し、狭くなった気道を広げる長時間作用性β2刺激薬などを併用して治療することになる。

ほかの薬で治まらない重症喘息には「抗IgE抗体」を

吸入ステロイドや長時間作用性β2刺激薬などを使用していても、発作が頻繁に起きてしまう重症喘息の場合には、「抗IgE抗体」という注射薬が用いられることがある。抗IgE抗体はIgE抗体とくっつくことで、マスト細胞の受容体にIgE抗体がくっつくのをブロックして化学物質の放出を防ぎ、アレルギー症状を抑える。抗IgE抗体の使用は、炎症が起きる、気道が狭くなるなどの個々の症状への対処ではなく、アレルギー反応の仕組みそのものに基づいた、根本的な治療だといえるだろう。

抗IgE抗体は、他の喘息治療薬と比べて高価ではあるが、治療費の一部の払い戻しを受けられる「高額療養費制度」などを利用すれば、経済的な負担を軽くすることが可能な場合もある。詳しくは、加入している医療保険の窓口や、かかりつけ医療機関のソーシャルワーカーに相談してみよう。

コラム:日本人によって発見されたIgE抗体

アレルギー反応におけるIgE抗体は、日本人の石坂公成(いしざか きみしげ)氏と照子夫人との共同研究によって、1966年に発見された。
当時の研究者たちの間では、アレルギー反応と関係するのはIgA抗体という物質であるという説が常識とされていた。実験の結果から、この説に疑問を感じた石坂氏は、アレルギー反応と関係する抗体を突き止める決意をする。人間の皮膚に抗体と抗原を注射して、反応の大きさを確かめる必要があったとき、石坂氏と照子夫人は自分たちの背中を実験台にしたという。
数々の困難を乗り越えた結果、IgE抗体が発見され、当時の常識がくつがえされることとなった。日本人によるこの世界的な大発見は、喘息のみならず、花粉症やアトピー性皮膚炎など、アレルギー性の病気全般の治療に大変役立っている。

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