疾患・特集

認知症アンケート結果

特集「アルツハイマー型認知症最前線」では、体験談をお寄せいただいた方々に、下記の質問をしました。結果とご意見は次の通りです。

Q. ご自身が認知症になったとき、告知を望みますか?

グラフ:ご自身が認知症になったとき、告知を望みますか?

回答を頂いた37名中、36名が「告知を望む」という結果になりました。残る1名は、「自身の介護経験を振り返ると、ケースバイケースだと考える」というご意見でした。

今、日本ではインフォームド・コンセントの考え方が医療現場に浸透しています。
これは、治療に先立ち、医師がその目的や具体的な治療内容をじゅうぶんに説明し、患者さんの同意を得るというものです。そのためにはまず、病名の告知が必要となります。
アルツハイマー型認知症の場合、その病気の特性から、患者さん本人が告知の内容を正確に受け止めることは大変難しいと考えられます。
それでも実際に、ご家族の介護を経験された方のほとんどが「自身への告知を望む」と回答された背景には、たとえ認知症であっても自分の残された人生について考えたい、症状の軽いうちに自身の判断能力でやり遂げたいことや整理したい問題などがある、などが挙げられるのではないでしょうか。そのためにも、告知を受けた患者さんが、少しでも長く自分らしい人生を送れるようなお薬の登場が期待されると言えるでしょう。

先生のお言葉「アンケート結果を読んで」

香川大学医学部精神神経医学講座教授 中村祐先生
香川大学医学部
精神神経医学講座教授
中村祐先生

認知症を告知するか否かは大変難しい問題です。おそらく、定型的な答えはなく、実際はケースバイケースということになってしまうと思います。法的な立場からすると、初期である程度理解が可能な間に告知を受ける必要があります。
というのも、それによって残された時間における患者さんの権利をある程度守ることができるからです。実際、成年後見制度を利用することにより能力が減退した時期においても患者さんの権利を守ることが可能です。また、色々な治療やリハビリテーション、介護施設への入退所も本来ならば、患者さんの意思に基づいて行わなければなりません。しかし、現在は認知症が不治で、かつ進行性の病であるという位置づけである為、告知を受けた際には相当の心理的な負担がかかると想像されます。心理的な負担に耐えられない状況にある場合や告知の内容を理解できない状況にあるときは、告知に関しては熟慮する必要があると思います。

アルツハイマー型認知症を告知する為のバックグラウンドとして、まず、告知の内容を理解できる間、つまりできるだけ早期に診断を受ける環境が必要です。次に、アルツハイマー型認知症がまったく不治ではなく、治療に期待がもてるという状況が必要です。
現在、早期診断の必要性については広く啓発され、多くの方が初期の段階でアルツハイマー型認知症の診断を受けられるようになりつつあります。また、治療法についても、進行を遅らせることが期待される薬剤の開発が、日々進展しつつあるのが現状です。

多くの努力が功を奏して、アルツハイマー型認知症の告知を受けても心配のない時代が来ることが望まれます。