疾患・特集

意外と知らなかった血液のこと

健康診断の意義と必要性が今、変わろうとしています。これからどう変わるのか、また注目される在宅検診の現状と、今後の普及が期待される在宅検診での血液検査についてご紹介します。

血液はどこで作られるのか

さて、最初にクイズをひとつ。血管があらゆる器官を含めた体のいたる所へと行き渡り、大量の血液が私たちの体内を循環していることは誰でも知っている。では、その血液は、体内のどこで作られているのだろうか?

実は血液のうち、赤血球、白血球、血小板の3種の血球類は、骨髄の中で作られているのだ。赤ちゃんの場合は、ほとんどすべての骨の骨髄で、大人の場合は頭蓋骨、脊椎(せきつい)、肋骨などの骨髄で作られている。

血液は、こうして作られた血球類と、養分を含んだ黄色っぽい液体=血漿(けっしょう)が混ざりあってできている。血液中の割合は、血球類が40~45%、血漿が50~60%。もちろん、血漿がなければ、血球類は全身に行き渡ることができない。

そして、驚異的なことに、たった一滴の血液の中には、なんと赤血球が約500万個、白血球が5,000~1万個、血小板が約25万個も含まれている。わずか一滴といえど、血液は奥が深いのだ。

血液の成分の図解

血液は、何で分類されるのか

血液型の分類として、誰もが知っている「ABO式」。これは1900年、ウィーン大学の病理学教室の助手だったK・ラントシュタイナーが発見し、その後、ドイツのデュンゲルン博士によって論理立てられたもの。ABO式とは、赤血球の表面の膜についている抗原のタイプによって分類されるもので、違うタイプの血液を輸血すると、最悪の場合、ショック死してしまうこともあるものだ。

ちなみに、このABO式による性格判断が日本ではよく話題にのぼるが、現在のようなカタチで体系立てられたのは日本でのこと。欧米ではあまり取り上げられることがないようだ。と言うのも、ABO式による性格判断は、一歩間違えば差別を生みかねないからだ。事実、白人の有色人種差別に使われたり、旧日本軍では兵士の能力差別に使われたこともあったとか。現在の国際社会を考えると、ABO式による性格判断は楽しむ程度にしておきたい。

血液型の分類には、他にもさまざまある。よく知られているもうひとつの分類「Rh血液型」も、赤血球の血液型の一種。D抗原というものを持つか持たないかでRh(+)とRh(-)に分類される

また、臓器移植の際に重要となるのは、「白血球の血液型」とも呼ばれるHLA(ヒト白血球型抗原)。白血球の表面にある抗原で、非常に複雑。大きく分けるとA座、B座、C座、DP座、DQ座、DR座の6種があり、さらにそれぞれに数十タイプもの種類があるのだ。しかも、これらのうち、最低でも4~5種類のタイプが一致しないと手術ができないというのだから、臓器移植の難しさがうかがえる。

こうして分類法を見てみると、血液の分類の仕方は枚挙にいとまがない。赤血球の分類だけでも約250種以上あるというのだから、白血球、血小板、血漿などによる分類を入れると押して知るべしだ。

血液は何でも知っている !?

一見、赤い液体にしか見えない血液だが、その中には血球や血漿などさまざまな要素が内包されて、それぞれに数多くの種類やタイプを持っている。親子の血液鑑定や事故・事件の被害者や加害者は、こうした血液内の種類やタイプが解明され、遺伝の仕方などの研究が進んだおかげで実現したものだ。

しかも、多くの血液を必要とすることはほとんどない。ほんのわずかな血液量で、さまざまなことがわかり、人物を特定することもできる。

ヒトのすべての遺伝情報を解明しようというヒトゲノム計画が一段落し、将来的には遺伝子による診断が一般的になるだろうと言われている現在。そして実際に、わずかな血液からその人の遺伝子を取り出すことが可能となっている今、血液は私たち本人以上に、自身のことを知っている存在とすら言えるのかもしれない。

公開日:2003年3月3日