私の生活習慣は肥満になりやすい?と心配なあなた。基本的な対策は食生活の改善と適切な運動です。肥満・肥満症の専門病院で治療してもらう方法もありますが、まだ課題が多いのが現状。まずは自分の必要摂取エネルギー量を知り、食生活を整えましょう。
まずは生活習慣を改善し、肥満を解消しましょう。多額の医療費が必要と予測される今後の高齢化社会において、いまの肥満解消は今後の医療費の削減にもつながります。もちろん、医療費削減のためだけでなく、病気にならないことがひとりひとりにとって大切なのは言うまでもありません。健康で長生きするためにも肥満の解消は重要なことになります。
肥満症の基本となる治療は食事療法です。肥満学会のマニュアルによると、食事療法の内容は(1)摂取エネルギーの設定 (2)栄養素の配分 (3)食習慣の改善からなります。
まず、1日に必要なエネルギー量は、身長から考えた標準体重と、生活活動強度(体重1kg当たりに必要なエネルギー)から計算します。それにしたがって、1日のエネルギー量を超えないように、バランスの取れた規則正しい食事をすることが大事です。
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
1日に必要なエネルギー=標準体重(kg)×生活活動強度(kcal)
例えば、身長170cm、生活活動強度が軽い人の場合、
標準体重=1.7×1.7×22=63.58
よって1日に必要なエネルギー=63.58×25~30≒1590kcal~1907kcal
出典:肥満・肥満症の指導マニュアル 日本肥満学会編集委員会
専門医や専門機関に相談してみましょう。ちなみに、大阪大学医学部付属病院では、次のような指導を行っているそうです。
まず、来院した「太った人」が「肥満症」であるか否かをチェックします。そうしてその人の隠れた病気をみつけます。何もなければ、単なる「肥満」なので治療はしません。そして、「肥満症」であると診断された患者さんは、その重症度により場合によっては入院治療することがあります。それは、緊急で減量の必要があるような場合であり、例えば「睡眠時無呼吸症候群」がある人などです。そうした場合、超低エネルギー食治療などを行って、速やかに体重減少してもらうこともあります。その際、不足しがちなビタミンやミネラルなどを補います。治療の目標は、標準体重まで減量させることではなく、「肥満症」から単なる「肥満」にすることです。
食事療法に運動をあわせて行えば、筋肉を落とさず、さらに脂肪を燃焼することができます。とくに、内臓脂肪は運動で減りやすく、これもまた欠かせません。
短距離走や重量あげのような無酸素運動は、筋力を増やし、また、ウォーキングなどの有酸素運動は、脂肪を燃やすことがわかっています。肥満学会編集委員がおすすめしている運動としては、歩行、ジョギング、ラジオ体操、水泳などの全身を使う有酸素運動です。また、1日1万歩以上の歩行も目標とされています。
トレーニングは週に3回以上行う必要があります。軽いものなら毎日から1日おきとし、また休日などを利用して十分な時間をとるのがよいとされています。
運動の強度については、いきなり強い運動をしないことです。軽い運動から始めて徐々にならしていきましょう。
注:1単位は80kcal相当
運動の強さ | 1単位当たりの時間 | 運動 (エネルギー消費量 kcal/kg/分) |
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Ⅰ.非常に軽い | 30分間くらい続けて1単位 | 散歩(0.0464) 乗物(電車、バス立位)(0.0375) 炊事(0.0481) 家事(洗濯、掃除)(0.0471~0.0499) 一般事務(0.0304) 買物(0.0481) 体操(軽い)(0.0552) |
Ⅱ.軽い | 20分間くらい続けて1単位 | 歩行(70m/分)(0.0623) 入浴(0.0606) 階段(降る)(0.0658) ぞうきんがけ(0.0676) ラジオ体操(0.0552~0.1083) 自転車(平地)(0.0658) ゴルフ(平均)(0.0835) |
Ⅲ.中等度 | 10分間くらい続けて1単位 | ジョギング(軽い)(0.1384) 階段(昇る)(0.1349) 自転車(坂道)(0.1472) 歩くスキー(0.0782~0.1348) スケート(0.1437) バレーボール(0.1437) 登山(0.1048~0.1508) テニス(練習)(0.1437) |
Ⅳ.強い | 5分間くらい続けて1単位 | マラソン(0.2959) なわ飛び(0.2667) バスケットボール(0.2588) ラグビー(フォワード)(0.2234) |
出典:肥満・肥満症の指導マニュアル 日本肥満学会編集委員会
食事療法や運動療法以外に薬物療法もありますが、日本では「肥満症」に適応をもつ薬はまだありません。そのため、これは今後取り組む課題となっています。