疾患・特集

失敗した私の減塩作戦

T男さん(52歳)の場合

それまで健康上何も問題がないと思っていたT男さんが、血圧が高いと指摘されたのが1年前。真面目な性格で、奥さんにも協力してもらい、すぐに減塩を始めた。

医師には1日の塩分摂取量はとりあえず10gを目標にと言われたが、もう少し少なめの方が良いのではないかと思い、目標を8gに設定し、医師に言われた次の日から実行し始めた。

8gの減塩食は、それまで食べていたものと比べると物足りなく感じたが、体のためと思い、我慢して続けた。ところがだんだんストレスがたまっていってしまった。

塩分を制限する一方で、もともと好きだった甘いものを頻繁に食べるようになった。料理を作ってくれる奥さんには申し訳ないと思い、家では奥さんが風呂に入っている間などにこっそり隠れて食べた。会社ではお茶の時間に、これまで全く食べないか、せいぜい食べても1つだったまんじゅうなどを、2つ3つと食べるようになっていた。

会社帰りに我慢ができなくなると、喫茶店に寄ってなんとなく後ろめたい気持ちを抱きながらコーヒーと一緒にケーキを食べることもあった。

3ヵ月もすると、血圧は多少下がったが、体重が5kg、半年後には8kg増えていた。

無理な減塩がストレスの原因に

このように、急激で無理な減塩は、ストレスの原因にもなる。T男さんの真面目な性格が災いしてしまったと言える。
高血圧の原因は塩分の取り過ぎ以外にもさまざまな要因が絡み合っている。ストレスや肥満も要因の一つなので、減塩をしながら、上手にほかの要素もコントロールしていくことが重要になる。T男さんの場合、徐々に塩分を減らし、慣れていく方法を取った方が良かったと考えられる。