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なぜ肥満が合併症を引き起こす?肥満から合併症になるメカニズム

肥満はさまざまな合併症を引き起こすことが明らかになっています。肥満が原因で、体の各器官に負担がかかったり、インシュリンのはたらきが悪くなったり。肥満による体重増加が負荷となり種々の病気の原因になったりします。肥満から病気になるメカニズムをまとめてみました。

肥満が合併症を引き起こす理由(1)
「体の各器官に負担がかかる」

人間の体はおよそ25歳前後に、その時の体重に見合って諸臓器組織が完成します。
従って、それ以降に体重(脂肪)が増加することは、その分だけ酸素や血液を要求されたり、骨や関節に荷重がかかってくるわけですから、体の各器官にとっては大きな負担になります。

肥満が合併症を引き起こす理由(2)
「インシュリンのはたらきが悪くなる」

肥満があるとインシュリンのはたらきが悪くなってくるのも問題です。これをインシュリン抵抗性といいます。血糖値が上昇し、血中のインシュリンは利用されないため増加して、高インシュリン血症をきたします。これが、糖尿病、高血圧、高脂血症の原因の一つとされています。

肥満が合併症を引き起こす理由(3)
「体重増加による心臓への負担」

心臓からの送血量は体重に比例して増加します。つまり、体重が増加すればするだけ心臓に負担がかかってきます。また、心臓そのものにも脂肪が沈着し、冠動脈の硬化、心筋梗塞、狭心症などを誘発する危険性が高まってきます。
一方、血中コレステロールや低比重リポタンパク(LDL)が増加し、血管壁に沈着することによって動脈硬化になりやすくなります。肥満症になると血圧も上昇します。

肥満が合併症を引き起こす理由(4)
「糖の取り込みの低下が高血圧、糖尿病などを引き起こす」

1989年に米国の医学者Reavenによって提唱された症候群で、インシュリン抵抗性(インシュリンの作用不足)に基づく冠動脈疾患の危険因子を集積した状態のことをいいます。
肥満症になると、脂肪組織や筋組織での糖の取り込みが低下してインシュリン抵抗性の原因になるといわれています。さらに、肥満があると筋肉や肝臓でのグリコーゲン合成酵素の活性も低下するために血糖が高くなり、これもまたインシュリン抵抗性を招きます。
このようなインシュリン抵抗性の状態は、高血圧、糖尿病、高脂血症をもたらしたり、動脈硬化を促進したり、冠動脈疾患の原因を作ってしまうので、とても危険です。
とくに上半身や内臓に脂肪が蓄積したリンゴ型肥満は、よりシンドロームX的な状態に陥りやすいといわれています。

肥満が合併症を引き起こす理由(5)
「肥満による過剰な荷重」

肥満が誘因のひとつであり、さらに症状の増悪因子のひとつになっている変形性関節症は中高年の最も一般的な骨・関節障害です。
肥満による過剰な荷重を受けて、骨や軟骨、筋肉、半月板などに変性、破壊が起こってきます。
O脚であることが多く、まず正座できない、階段を降りる時や立ち上がろうとする時、歩き始めに痛みがあり、しばらく歩いていると楽になりますが、長く歩いていると痛くなって歩けなくなります。
また、ひざに水がたまるといった症状が一般的です。特に下肢に発生するものほど体重の影響が大きく、高齢になるに従って顕著に現れてきます。