

放射線に被ばくすると細胞のDNAは傷つき、細胞ががんになる危険性(発がんリスク)が増えてしまう。福島原発事故で広域を汚染した放射性セシウムは、半減期が約30年と長く、わたしたちは長期にわたって、この発がんリスクに向き合うことになる。本企画では低線量放射線による健康への影響について、参考となる情報とチェックしておきたいWEBサイトを紹介していく。


放射能(放射性セシウムなど)から発した放射線を短時間で大量に被ばくすると脱毛ややけど、または白血病などの身体症状が必ずでる。これを放射線の「確定的影響」と呼ぶ。今回の福島原発事故では幸いにも確定的影響がでるほどの被ばく事故は起こっていない。
一方、原発事故によって漏れだした放射能による低線量の放射線に被ばくすると、DNAが傷ついて発がんリスクを生じる。

この発がんリスクは目に見える症状がでることがないため判断がむずかしい。そのため過去に被ばくしたひとの データから健康への影響(発がんリスク)を統計的に推測している。これを放射線の「確率的影響」と呼ぶ。
いま政府が対策を行い、マスコミの注目を集めているのはこの【確率的影響】であり、発がんの可能性をより低く抑え込むことが焦点となる。



具体的にどのくらいの被ばく量で、発がんリスクが上昇すると考えられているのか疑問に思う人は多いだろう。
放射線から身を守るための方法を研究する専門機関「国際放射線防護委員会(ICRP)」によると、がんで亡くなる人が、長い時間をかけて累計100ミリシーベルトを被ばくするごとに0.5%増えるという。現在がんで亡くなる日本人は約30%であるため、それにこの値が加算されることになる(図1)。

しかし、100ミリシーベルト未満の低線量の放射線被ばくとなると、その健康への影響はよくわかっていない。
その理由は、100ミリシーベルト未満というごくわずかな低線量の被ばくでは、食生活や運動など他の生活習慣によるがん死のリスクに埋もれてしまい、
放射線被ばく単独での確率を見分けることがとても難しいためだ。
とはいえ安全であると確認されていないことから、安全性を考えた
放射線防護案として、
100ミリシーベルト未満でも直線的に比例す
ると仮定して、対策が行われている。

それぞれの比較は難しいが、国立がん研究センターが発表している生活習慣などその他のがん発症リスクをみると、100〜200ミリシーベルト被ばくしたときの発がんリスクの1.05倍という数値は、野菜不足の1.06倍と同程度であり、決して高い数値ではない。絶対安全であるともいえないが、危険を強調することが正しいとは言いにくい。



低線量放射線被ばくによる健康への影響は、専門家でも意見が分かれており、現在の放射線対策の基準は安全性を重視した考え方に基づいている。
もちろん放射線の被ばく量は少ないに超したことはないが、現在の低線量被ばくが続く場合は、放射能を恐れすぎたり、過剰に対策をとりすぎることによるストレスのほうが健康に悪影響を及ぼすと指摘する専門家もいる。
前述にもあるとおり、発がんリスクは放射線以外にも多く存在するため、放射線による発がんリスクだけを取りだすことはとてもむずかしい。チェルノブイリ原発事故の追跡調査でも、100ミリシーベルト未満の低線量放射線被ばくの発がんリスクだけを取り出すことはできていない。そのためこのリスクの程度を解明しようと国立がん研究センターなどの専門機関による調査がこれから何十年にもわたって始められようとしている。
低線量被ばくは、健康に対するリスクである。すでに被ばくしてしまったことで生じるリスクを、生活習慣のように改善できるリスクと比べて数値が低いから安心してくださいとはいえない。しかし、いろいろな意見があると認識したうえで、自身にとっての適切な情報源を見極めておく。あるいは正しい放射線対策を政府・自治体に求めていく。それがわたしたちにいまできる最良の方法だろう。

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