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妊娠期に投与された薬が赤ちゃんに与える副作用とは

妊婦さんが薬を服用していると、赤ちゃんに影響を及ぼし、新生児として誕生したときに副作用が現れる場合があります。これを「新生児薬物離脱症候群」といい、赤ちゃんの最も重い症状としては、息を止めたり、痙攣したりすることもある「新生児薬物離脱症候群」について、詳しく説明しましょう。

赤ちゃんに痙攣、無呼吸の症状も

妊婦さんと赤ちゃんは、へその緒でつながり、必要な栄養などが伝わっています。

このとき、妊婦さんが薬を服用していると、赤ちゃんに影響を及ぼし、新生児として誕生したときに副作用が現れる場合があります。これを「新生児薬物離脱症候群」といい、赤ちゃんの最も重い症状としては、息を止めたり、痙攣したりすることもあります。

ここでは「新生児薬物離脱症候群」について、詳しく説明しましょう。

「新生児薬物離脱症候群」の原因と症状

妊婦さんが薬やアルコールを摂取すると、これが胎盤を通過して赤ちゃんにも伝わることになります。

そして、出産を経てへその緒のつながりがなくなると、新生児にはこれらの成分が届かなくなり、この成分が赤ちゃんの体から排出される過程で、脳や消化管、自律神経に関する症状が一時的に現れるのです。

脳の症状としては、筋肉の緊張がなくぐったりしていたり、不安興奮状態で手足をブルブルとふるわせたりすることがあります。もっと重い症状になると、息を止めてしまったり、痙攣を起こしたりすることもあります。

消化管の症状としては、下痢や嘔吐、自律神経の症状としては、汗をたくさんかいたり、熱が出たりします。

影響を及ぼす薬の種類は?

このように、妊婦さんの服薬は赤ちゃんに重大な影響を及ぼす場合もあるので、注意が必要です。

「新生児薬物離脱症候群」を発症させる可能性がある薬や嗜好品としては以下のものがあります。

  • 催眠・鎮痛剤
    バルビツール系薬物(バルビタール、フェノバルビタール、チアミラールナトリウムなど)
    非バルビタール系薬物(フルニトラゼパム、ブロモバレリル尿素など)
  • 抗てんかん薬(フェノバルビタール、フェニトインなど)
  • 抗不安薬(クロルジアゼポキシド、ジアゼパムなど)
  • 向精神病薬(クロルプロマジン、ブロムペリドール)
  • 抗うつ薬(ノルトリプチリン、イミプラミンなど)
  • 非麻薬性鎮痛薬(ペンタゾシン)
  • 気管支拡張薬(テオフィリン)
  • 嗜好品(アルコール、カフェイン)

妊婦さんは絶対薬を飲んではいけないの?

このような話を聞くと、「妊娠中は絶対薬を飲んではいけない。」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、赤ちゃんの健康ももちろん大切ですが、お母さんの健康も同じように大切なものです。薬を飲まなければ、お母さんの健康を維持できない場合には、医師の判断によって投薬が行われる場合もあります。

また、まだ妊娠と気づかないうちに、服薬してしまう場合もあります。後で妊娠に気づき「あのとき飲んだ薬は大丈夫なの?」と心配になる妊婦さんもいらっしゃるかもしれません。

このような場合、受精から2週間(妊娠4週目)ぐらいまでにあてはまる法則として「All or Noneの法則」というものがあります。

これは、受精卵が分裂を繰り返している時期に薬の大きな影響が受精卵に与えられた場合には、受精卵は死んでしまうため(All)、そもそも妊娠したことには気づかずに過ごすことになります。一方、小さな影響の場合は他の細胞が代償するので、全く影響がなく(None)普通の発育ができる、というものです。

このため、この期間に薬を服用しても、新生児に影響することはない、と考えられています。

しかし、妊娠4週目以降になると、妊婦さんの飲んだ薬が胎児に重大な影響を及ぼす場合もあるため、注意が必要となります。

ここまでご紹介したように、妊婦さんの服薬は新生児に影響を及ぼす場合もありますが、かといって、妊婦さんのために必要な薬でも絶対に飲んではいけない、というものでもありません。

妊娠していることがわかった、または妊娠を希望しているときに、お母さん自身の体調が悪くなったときは、自己判断せずに医師に相談するようにしましょう。

公開日:2016/02/08