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注射はいらない!?C型肝炎は飲み薬だけで治療できる時代へ

日本のC型肝炎ウィルス保有者は推定150万~200万人。インターフェロンが効きにくい人などにとって新たな選択肢となる、2種類の飲み薬による国内初の、インターフェロンを用いないIFNフリー療法が実現しました。

次々と登場した、飲み薬だけのC型肝炎の治療法

飲み薬だけの、C型肝炎の治療法が新登場!

日本における、C型肝炎の原因となるC型肝炎ウイルス(HCV)保有者は、推定150万~200万人。C型肝炎は、急性の場合は倦怠感や食欲不振、吐き気などが短期間みられることもありますが、通常は症状もないため、感染に気づかないことがあります。しかし、肝臓の中にすみついたC型肝炎ウイルスが、6ヵ月以上の長期にわたって肝臓に徐々に炎症を起こす、慢性肝炎になることもあります。慢性肝炎は、初期のうちは特に症状はありませんが、進行すると肝臓が線維化して硬くなり、肝硬変や肝がんになる恐れがあります

C型肝炎ウイルスは、日本人の場合は主に、1型と2型という遺伝子型(ジェノタイプ/ゲノタイプ)と、さらにそれぞれa型とb型に分類されます。日本人では、1b型の患者が約7割を占めると言われています。1型は、治療の柱とされている「インターフェロン」(IFN)という注射薬が効きにくいため、有効な新薬の登場が望まれていました。そんな中、2013年12月に「アスナプレビル」(プロテアーゼ阻害薬)という飲み薬が発売され、続いて2014年9月には「ダクラタスビル」(NS5A阻害薬)という飲み薬も発売されました。これにより、インターフェロンが効きにくい人などにとって新たな選択肢となる、2種類の飲み薬による国内初の、インターフェロンを用いないIFNフリー療法が実現しました。さらに、2015年9月に「レジパスビル/ソホスブビル配合錠」(NS5A阻害薬とNS5B阻害薬の配合剤)、2015年12月に「オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル配合錠」(NS3/NS4A阻害薬とNS5B阻害薬の配合剤)もそれぞれ発売され、IFNフリー療法の選択肢がさらに広がりました。

「抗ウイルス療法」に分類される、飲み薬だけの治療法

従来のものも含め、C型肝炎の治療は、主に以下の方法で行われます。

抗ウイルス療法

原因となるC型肝炎ウイルスの増殖を防ぎ、排除することを目的とした治療法です。どの治療法が行われるかは、C型肝炎ウイルスの遺伝子型やウイルス量、治療が初めてか2回目以降か、といったことなどをもとにして判断されます。薬の種類や投与間隔、期間などは、それぞれの場合に応じて異なります。副作用も治療法によって異なりますが、主に発熱、頭痛、倦怠感、かゆみなどが現れることがあります。

抗ウイルス療法で用いる主な抗ウイルス薬とその組み合わせ

●注射薬

インターフェロン注射薬
ペグインターフェロン注射薬

●注射薬と飲み薬

インターフェロン 注射薬 + リバビリン 飲み薬
ペグインターフェロン 注射薬 + リバビリン 飲み薬
ペグインターフェロン 注射薬 + リバビリン 飲み薬 + アスナプレビル 飲み薬

●飲み薬 NEW!

ダクラタスビル 飲み薬 +アスナプレビル 飲み薬

レジパスビル/ソホスブビル配合錠 飲み薬

オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル配合錠 飲み薬

肝庇護療法

炎症を抑え、肝臓が線維化して硬くなるのを遅らせることを目的とした治療法です。抗ウイルス療法を受けられない場合や、抗ウイルス療法を受けてもC型肝炎ウイルスを排除できなかった場合などに行われます。注射薬の「強力ネオミノファーゲンシー」と、飲み薬の「ウルソデオキシコール酸」のどちらかの使用、または併用が主な方法です。副作用として、注射薬のほうは低カリウム血症や高血圧症が、飲み薬のほうは胃の不快感、下痢、便秘などが現れることがあります。また、過剰な鉄分が肝臓にダメージを与えないために血液を抜く「瀉血(しゃけつ)療法」が行われることもあります。

インターフェロン少量維持療法

注射薬のインターフェロンまたはペグインターフェロンを、単独で少量ずつ、長期にわたって投与する方法です。抗ウイルス療法ほどの、C型肝炎ウイルスを排除する効果はなく、病気の進行を遅らせることが目的です。抗ウイルス療法を受けられない場合や、抗ウイルス療法を受けてもC型肝炎ウイルスを排除できなかった場合などに行われます。

C型肝炎ウイルスは2030年までに根絶できる!?

IFNフリー療法は、ウイルスが薬剤耐性を獲得して薬が効かなくなるリスクがあるため、現時点ではインターフェロン療法が第一に選ばれます。しかし、日本よりも早くからIFNフリー療法が行われてきた欧米では、高い治療効果が既に認められています。「C型肝炎ウイルスは、2030年までに根絶できる」とさえ主張する医師たちもいるほどで、日本のC型肝炎患者や、治療する医師たちの間でも、期待が高まっています。続々と新薬が登場し、選択の幅が広がっているC型肝炎の治療現場に、今後もいっそうの注目が集まりそうです。

公開日:2016/03/07