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家のなかは危険がいっぱい!?簡単にできる転倒予防対策

要介護の原因の上位に挙げられる高齢者の転倒・骨折。その多くは家庭で起こっています。高齢になると、下半身の筋力やバランス感覚、視力が低下し、転倒しやすくなるため、転倒を防ぐためには、日ごろから適度な運動をして筋力の低下を防ぐことが最も大切です。加えて住環境も見直すようにしましょう。大掛かりな工事不要!ちょっとした工夫と気づきでできる転倒予防対策を紹介します。

高齢者の転倒が怖いワケ

高齢者の転倒

ふとしたはずみに転んだことがきっかけで、介護が必要になってしまう人が多いことをご存じでしょうか。高齢者が要介護となるきっかけの第1位は脳卒中だが、次いで衰弱、骨折が挙げられ、高齢になるほど衰弱や転倒・骨折の割合が増加します。転倒や骨折で介護が必要となるというと、若年層はピンと来ないかもしれませんが、高齢者の場合は、そのまま寝たきりになってしまうことも少なくありません。

グラフ:介護が必要になった原因

高齢になると、下半身の筋力やバランス感覚、視力が低下し、転倒しやすくなります。しかも女性の場合、60歳を超えると約半数が骨粗しょう症にかかっていると言われており、ふとしたはずみの転倒でも骨折しやすくなります。

高齢者が転倒しやすい理由

  • ●下半身(足)の筋力低下
  • ●バランス感覚の低下
  • ●脳卒中などの後遺症による麻痺
  • ●視力の低下
  • ●薬の服用による眠気やめまい など

転倒すると、反射的に手をついて体を支えようとするため、手首を骨折するケースが最も多いようです。しかし、それも間に合わず、お尻から転倒して骨盤のつけ根の関節(大腿骨頸部)を骨折すると、歩行障害が残りやすく、高齢者ほど寝たきりになる傾向が強くなります。

転倒の予防は「手すり」だけじゃない!

転倒を防ぐためには、日ごろから適度な運動をして筋力の低下を防ぐことが最も大切ですが、住環境を見直すことも重要です。高齢者の転倒予防対策として最も適しているのは手すりの設置や段差の解消ですが、工事が必要となったり、費用もかかります。そこで、日ごろ何気なくつかまっていたり、よく手をつく場所にイスを置いたり、家具の配置を変更してみるのも一案です。玄関の上がりかまちの大きな段差には、間に少し低い足置きを置いたり、上がりかまちにすべり止めのマットを敷くなど工夫しましょう。

こんなことができます「介護保険の住宅改修」

すでに介護保険の要支援、要介護認定を受けている場合は、住宅改修の給付を受ければ、手すりの設置や段差の解消などができます。介護保険の住宅改修費は、要介護度に関係なく、一律20万円が限度で、原則は1回のみの利用。要介護度が3段階、または要支援から4段階以上上がったときには再び20万円を上限に利用が可能です。引っ越ししたときにも再度利用できます。

■申請できる工事

  • (1)手すりの取りつけ
  • (2)段差の解消
  • (3)すべり防止および移動の円滑化等のための床または床材の変更
  • (4)引き戸等への扉の取り替え
  • (5)洋式便器等への便器取り替え
  • (6)その他住宅改修に付帯して必要となる工事

※(1)~(3)は転倒防止に役立つ住宅改修

解消できない段差は「確認」でクリア

小さな段差に気を付けて

高齢になると、歩幅が小さい「すり足」で歩く人が増えるため、小さな段差につまずきやすくなります。そのため、カーペットをめくれたままにしていたり、電気のコードを床に散乱させないことが大切です。部屋や廊下などの床面には、なるべく物を置かないように整理・整頓を心がけましょう。また、部屋と部屋の間にある段差は、ホームセンターなどに売っている段差解消用具を使うことで解消することもできます。横幅が足りないと、この段差解消用具につまずくこともあるので、出入りする幅に合わせたものを購入するようにしましょう。

転倒予防には段差を「解消」することが最も重要ですが、それができない場合には、「確認」できるように工夫しましょう。視力の悪化によって、段差が見えにくいことも転倒を起こす原因となっているので、段差があることがはっきりわかるように、境目に目立つ色のすべり止めテープなどを貼るだけでも予防になります。また、夜間であっても、長年住み続けた我が家だからと電気もつけずにトイレに行く人もいますが、これは非常に危険です。廊下に暗くなると点灯する足元灯をつけるなどして、足元が確認できるようにしましょう。

現在の住まいの状態、生活に合わせた工夫で、年齢を重ねても自宅で快適に過ごせるよう、住環境整備をはじめましょう。

気をつけよう!転倒しやすい住まいチェック

  • (1)家庭内の移動の際、よけたり、動かさないと通れないものがある
  • (2)部屋の床や廊下、階段などに新聞や雑誌などを置いている
  • (3)電気コードが歩くときに邪魔になっている
  • (4)カーペットやキッチンマット、玄関マットにすべり止めをしていない
  • (5)夜間トイレに行くときに電気はつけない
  • (6)普段使うものも、台に乗ったり背伸びをしないと届かない所に置いている
  • (7)家のなかはスリッパや靴下で歩いている
  • (8)階段や廊下、トイレに手すりはついていない
  • (9)浴室内はタイル張りのままで、すべり止めはしていない
  • (10)玄関の上がりかまちの段差でつまずいたことがある
公開日:2007/12/10