「交通手段がなかった」こんな理由による救急車の出動件数が増加しています。救急車といえば本来、急病人や事故によるケガ人など、早急に医療機関で治療を受ける必要がある人を運ぶもので、救急車をタクシー代わりに利用するなど、もってのほかです。本来救われるべき命が危険にさらされています。そんな救急最前線の状況をお伝えします。
「1年間に50回近く救急車をタクシー代わりに呼んだ男逮捕」―こんなショッキングな見出しの新聞記事を目にすることも。救急車といえば本来、急病人や事故によるケガ人など、早急に医療機関で治療を受ける必要がある人を運ぶものです。ちょっと体の具合が悪い程度で呼ぶものではありません。ましてや「タクシー代がかかるから」などと、医療機関への交通手段として利用するなど、もってのほかです。
しかし現実には、救急車の出動件数は年々増加しています。東京都の状況を見ると、平成8年から18年の10年間で、1日当たりの出動件数が平均で610件も増えており、その背景には本当に必要な人が利用していないという状況があるようです。
平成18年 | 平成8年 | 比較 | |
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年間件数(約) | 68万7千件 | 46万6千件 | 22万件増加 |
1日当たりの平均件数 | 1,882件 | 1,272件 | 610件増加 |
出動頻度 | 46秒に1回 | 68秒に1回 | |
現場までの所要時間 | 6分10秒 | 5分18秒 | 約1分増加 |
それでは救急車を呼んだ人は、いったいどんな人だったのでしょうか。「消防に関する世論調査(平成18年)」によると、救急車を呼んだ理由は下記のとおりです。
3位以下の理由を見ると、まさに救急車をタクシー代わりに、安易に利用している様子がうかがえます。人口の高齢化で独居老人が増え、自分では判断がつかず、強い不安から救急車を呼ぶケースが増えているのかもしれません。核家族化により子育てに悩む母親が、赤ちゃんの容態が急変したことにびっくりし、つい救急車を呼ぶケースも考えられます。
しかし、そうした本来の目的外での利用が増えることで、本当に救わないといけない命が危険にさらされる状況まできています。
もしあなたが、突然のケガや病気になったらどうすればよいのでしょうか。出血や痛みがひどく、重症か軽症かの判断がつけられません。通院をしたいが体調が悪く、医療機関まで行く手段がありません。救急車を呼ぶほどではないと分かってはいるものの、ほかに方法が考えつかない…そんなときに相談に応じてくれる公共機関があるのをご存知ですか?
例えば東京都なら、「#7119 救急相談センター」を設け、救急救命士の資格をもつ救急隊員OBや看護師が24時間体制で対応しています。電話をすれば、急病に対する処置や、ケガや病気の程度に応じたアドバイスをしてくれるほか、急を要すると判断した場合には救急車の出動の要請もしてくれます。通院や入退院など、緊急でない場合の医療機関への搬送を有料で行うサービスもあります。
ふだんからこうしたサービスに関する情報を持っておくことで、いざ!というときの備えにしましょう。ひとりでも多くの、本当に危険な命を救うためにも。