秋の夜長。たまっている本も読みたいし、DVDも見たい。たっぷり楽しみたくなるこの季節。でも、もし、寝たくても寝付けない、あるいは眠ったはずなのに寝足りない気分が残るとしたらどうでしょう。いま、そんな状態が続く睡眠障害の人が増えています。不眠は集中力の低下やイライラを招くだけでなく、疲労が蓄積されて、うつ、肥満、生理不順その他さまざまな病気を引き起こす可能性があります。週に何回も眠れない日がある、いつも十分眠った気がしない、など不眠が続いている人は、医師に診断されたら、適切な治療を受けることが必要です。でも、その前に、寝室をチェック。寝室の環境を変えることで、ぐっすり眠れるようになるかもしれません。今回はその中で、マットレスや掛け布団などの寝具に注目します。
人間の背骨は、まっすぐに立ったときになだらかなS字型を描きます。マットレスや敷き布団は、このS字型を保持できるものが望ましいと言えます。人は眠っているとき、こきざみに体を移動させて、まんべんなく布団に接触させています。そうすることによって、ある部分だけが圧迫されて、血行が悪くなるのを防げます。ところが、無理な姿勢で寝るしかない布団だと、体の特定部分に負担がかかり、不眠はもちろん、腰痛などを引き起こすことも。布団は硬すぎても柔らかすぎても、体に負担がかかります。適度な硬さを持ち、体の重さをたくさんの点で支える体圧分散型の布団が理想的。硬さの目安は、布団を手で押して3センチメートル沈むくらい。ただし、その人の肉付きによって変わるので、できれば一度お店で寝てみて、寝心地を試しましょう。
体の重さを、お尻と肩だけで支えることになるので疲れてしまいます。薄い布団も同じこと。肩甲骨や腰骨、足のかかとなど、体の硬い部分が痛くなります。仰向けになると肩甲骨が痛いし、横向きになると肩や腰骨が当たります。どの姿勢でも楽でないので寝返りが多くなり、深い眠りが妨げられてしまいます。
布団が柔らかすぎると、一番重いお尻の部分だけが沈み込んでしまいます。体が不自然なW字型を描くことになるので、微妙な筋肉の緊張が一晩中続きます。そのため、腰痛や肩こりになりやすいようです。また、横向きやうつぶせの状態が多くなり、寝返りが不自由になります。
適度な硬さのマットレスを選ぶことが大事なのは、敷き布団と同じ。それに加えて、幅も重要です。ベッドの幅は、少なくとも90cm以上なければ、寝返りを打ったときに体が外に飛び出してしまいます。理想的なのは、両手を広げた長さ。これなら眠っているときに、自然に寝返りを打つことができ、よく眠れます。90cmを下限に、身長に合わせて幅の広いベッドを選びましょう。
掛け布団選びで大切なポイントは、保温性や保湿性。そして体に負担をかけない軽めなものがよいでしょう。眠っているときは、意外なほど汗をかいています。夏ほど汗はかかないにせよ、吸湿性に優れた素材の布団を選びたいものです。ウールや羽毛などの天然素材は、寝室の温度変化や湿度の変化に対応して、快適な状態を保ってくれるのでおすすめです。
軽く体にフィットするので、体と布団の間に隙間ができにくく、暖かく眠ることができます。
羽毛は寒いときは広がってたくさん空気を含み、暑いときは縮まって空気の流れをよくします。さらに、湿気を吸い取って外へ拡散する性質があるため、冬暖かく過ごすことができます。難点は価格が高いことです。
暖かく、吸湿性、放湿性に優れています。ウールには独特のちぢれがあり、その部分に空気がたっぷり含まれるので、外部が冷たいときは内部の暖かさを守り、外部が暑いときはその暑さを遮断します。また弾力性があるので使いやすいです。体へフィットする力は羽毛に劣りますが、価格は羽毛布団より安いようです。
布団の中の温度は33度、湿度55%が快適とされています。室温が5度上がるか下がるだけで、深い睡眠の時間が20%近くも少なくなり、途中で目覚める回数も5倍になってしまいます。特に寒いと寝つきが悪くなるので、暖かい環境で眠れることが望ましいと言えます。かといって、一晩中、無理に体を温め続けると、生体リズムが乱れて体調を崩すことがあります。電気毛布を使う場合は、できれば寝る前や寝入りばなだけに使って、あとは体から自然に発する熱で眠るのが理想的です。
たっぷり吸った汗を追い出すため、室外で干したり、クリーニングに出したりするお手入れもお忘れなく。