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今さら聞けない!携帯電話と心臓ペースメーカーの関係

「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください。なお、優先席以外ではマナーモードに設定し、通話はお控えください」。電車に乗っていると、携帯電話の使用に関する車内アナウンスが聞こえてくることがある。通話マナーの問題は言うまでもないが、優先席付近についてこのアナウンスを流しているのは、心臓ペースメーカーの使用者に対する配慮が求められているため。そもそも、携帯電話の使用と関係があると考えられている心臓ペースメーカーとは、どのようなものなのだろうか?

そもそも心臓ペースメーカーとは

心臓は体中の血液を集めたり送り出したりするため、つねに収縮と拡張とを繰り返している。これを「拍動」といい、1日に約10万回おこなわれる。

ところでこの拍動のリズムが、電気刺激によって作られていることをご存知だろうか。電気刺激を作り出しているのは、右心房にある「洞結節(どうけっせつ)」というところ。
ここから興奮が心筋細胞に伝わり、心臓を収縮させたり拡張させたりしているのだ。
ところが、洞結節に支障が起こると、不整脈が生ずる。脈拍が不規則になったり、緩んだり、あるいは速くなったりするのである。不整脈はときに脳梗塞を招くばかりか、意識障害をも引き起こす。場合によっては、突然死につながることも――。

洞結節のかわりに、脈拍を作り出してくれるのが「心臓ペースメーカー」だ。電池と制御回路、それに刺激を心臓に伝える電極リード線から成っている。心筋に人工的な刺激を与えることで、心収縮を発生させるものだ。もともと体の外に取り付ける「体外式」が使われていたが、1960年代には皮膚の下に埋め込む「植込み式」が開発された。

携帯電話によって誤作動が引き起こされる!?

携帯電話は、通話中のみ電波を出しているわけではない。携帯電話の近くに心臓ペースメーカーの使用者がいた場合、この電波の影響により、誤作動が引き起こされてしまう可能性があると考えられている。優先席付近では携帯電話の電源を切るように呼びかける車内アナウンスは、この考えに基づいて、携帯電話の使用者に注意を促している。

○×クイズにチャレンジ!

優先席付近で携帯電話の電源を切るのは、お年寄りが携帯電話の着信音に驚き、心臓に負担がかかってしまうから?

答え × … 優先席は、心臓ペースメーカー使用者が座っている可能性がある。距離が離れていれば、携帯電話からの電波は影響を及ぼさないが、至近距離では誤作動を招く恐れがある。

電車の中では、優先席に近付かなければ、心臓ペースメーカー使用者と接近することはない?

答え × … 満員の電車内では心臓ペースメーカー使用者と、知らずに接近していることがある。ラッシュアワーのような混雑した状況では、総務省が定めた指針に従い、携帯電話と心臓ペースメーカーとの距離が15cm程度以下にならないよう、注意を払うようにしたい。

携帯電話の電波が原因で、ペースメーカー使用者が死亡した例はない?

答え ○ … これまでの死亡例はゼロとされている。ただし今後、誤作動がもとで思わぬ事故が発生しないとも限らない。配慮を怠らないようにしよう。

心臓ペースメーカーを使っている人は、携帯電話を使えない?

答え × … 利用は可能。ただし、ペースメーカー植込み部位より15cm以上離して使用する。通話の際は、植込み部位と左右反対の耳に当てる。持ち歩くときも、植込み部位から15cm以上離して携帯するか、電源を切ること。

携帯電話のほかにも注意すべき機器はある?

答え ○ … 携帯電話以外にも、IH式電気炊飯器の電磁波により、心臓ペースメーカーの設定がリセットされてしまった事例が報告されている。ペースメーカーの使用者 は、炊飯中はもとより保温中もIH式電気炊飯器のそばに長時間立ち止まらないようにするべきだ。このほか、店舗の出入口などに設置された盗難防止装置によって、誤動作が引き起こされる可能性もある。

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公開日:2014年6月23日