2002年11月。スカッシュ中の高円宮殿下が突然亡くなった。原因は心臓の動きが不規則になる不整脈「心室細動」である。この事件が発端となり、心停止などの患者に対する応急措置がおおいに重要視されるようになった。全国の消防署などでおこなわれる「救命講習」には、大勢の一般市民が参加。2005年の愛知万博では、こうした市民の働きにより一命をとりとめた観客もいる。とっさの事故にいつでも対応できるよう、ぜひ救命手当を覚えておこう!
目次
119番通報してから救急車が到着するまで全国平均で約6分。最近は、119番通報の頻度が全国的に増えたため、平成14年度の平均は6.3分となっている(出典:総務省「平成15年版消防白書」) 。このような状況ではたして命は助かるのだろうか?
カーラーの救命曲線は、心臓や呼吸が止まってからの時間経過と死亡率をあらわしたもの。心臓停止の傷病者を3分間放置すると、死亡率は50%となることがわかる。5分後ではさらに高率だ。救急車がきてくれるまで手をこまねいて見ていたら、大切な命が失われかねないことがわかるだろう。つまり、突然死を防ぐには、救急救命士や病院の医師だけでなく、その場に居合わせた人「バイスタンダー」の力が不可欠なのだ。
傷病者に近づき、耳元で「大丈夫ですか?」「もしもし」などと声をかけ、傷病者の肩を軽くたたく。
意識がなければ大声で「誰か来てください」と人を集める。そして、「あなたは、救急車を呼んでください」「あなたはAEDを持ってきてください」などと指示。
頭部側の片手を傷病者の額に当て、もう一方の手(胸側)の人差し指と中指をあごの先に当てる。これを持ち上げて気道を確保する。ただし、下あごの柔らかい部分を圧迫したり、無理に頭を後ろに反らせたりしないこと。
気道を確保したまま、自分の顔を傷病者の胸側に向け、頬を傷病者の口と鼻に近づける。呼吸の音を確認するとともに、自分の頬で相手の吐く息を感じとる。
呼吸がなければ、人工呼吸開始。気道を確保したまま、額に当てた手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみ、自分の口を大きくあけて傷病者の口を覆うこと。息が漏れないようにして、ゆっくりと2回吹き込むのがコツ。
4.の要領で、呼吸をチェック。また、体になんらかの動きが見られないか10秒以内に調べる。
循環のサインがなければ、直ちに心臓マッサージ開始。まず胸の一番下の肋骨を人差し指と中指で触れ、そのまま指を肋骨に沿って胸の真ん中まで移動させる。真ん中の頂点で指を止めたら、もう一方の手の付け根をこれに並べ、平行に置く。上からもう一方の手のひらを重ね、肘をまっすぐにして体重をかけ、胸を圧迫。大人は15回、子どもは5回繰り返す。
AED…電気ショックを与え、心臓の筋肉けいれんを回復させる医療機器。音声や文章メッセージなどで手順を教えてくれるので、小学生でも使用可能。2004年から一般市民の使用も認められており、駅や空港などに設置されるようになった。
AEDを傷病者の横に置き、ケースから本体を取り出すか、ケースを開ける。さらに電源ボタンを入れる。
傷病者の胸を開いたら、電極パッドの袋を開封してシールをはがし、粘着面を胸に貼る。パッドの一方は、右前胸部に、もう片方は左側胸部に。
電極パッドを貼り付けると「傷病者から離れるように」というメッセージが流れる。周囲の人たちにも「みんな離れて」と指示。解析が自動的にスタートする。
除細動の指示が出たら、作動を開始。「電気ショックが必要です」などの音声メッセージが流れ、自動的に充電がおこなわれる。完了すると、「除細動ボタンを押してください」という音声が。周囲の人を離れさせたうえで、除細動ボタンをオン。
※以後、除細動を繰り返すか作動を終了するかは、AEDの指示に従う。
全国の消防署では、一般市民を対象とする「普通救命講習」や「普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習」「上級救命講習」などをおこなっている。詳しくは消防署や、自治体の防災窓口などに問い合わせるとよい。いざというときに困らないよう、ぜひプロのコーチを受けよう!