日常のあらゆるシーンで、わたしたちは不安や悲しみ、憤りを感じたりしながら生きている。その結果、ストレスが生まれ、心身の不調へと発展してしまうことも…。だが、同じ場面に直面しても、こうした感情をあまり感じない人もいる。つまり、ストレスは物事の捉え方次第で増えたり減ったりするということだ。認知療法は、かたよった「認知」(物事の捉え方)を正していくことで、問題のもとになっている感情を改善する精神療法。心の病気にかかっていない人も、ストレス防止対策としてぜひ活用してみよう。
ストレスがたまると、私たちは次の3つの面において悲観的な感情を抱くようになる。
上のようなパターンはいずれも偏った考え方であり、けして合理的な反応とはいえない。それにもかかわらず、こうした感情にとらわれた結果、心身や行動に悪影響を及ぼすことはよくある。これを打破するためには、自分がどんな考え方の癖を持っているか、把握することが大切だ。
そこで、チェックしたいのが「自動思考」だ。物事に対し、ぱっとひらめいたイメージや考えを指す心理学用語である。
例えば、道を歩いているときに、偶然、知り合いとぱったり出会ったとしよう。声をかけたにもかかわらず、相手が挨拶もせず、視線も合わせずに行ってしまったとしたら、あなたはどんな気持ちになるだろうか。
(1)~(3)では、不安や悲しみ、怒りが湧き上がってくるだろう。だが、(4)では、気遣いの気持ちしか生まれない。このように、自動思考次第で気分はかなり変わるものなのだ。
それでは、具体的にどのように考え方を変えていけばよいのだろう。
この作業をおこなうことによって、あなたは次第に自分の考え方の癖「スキーマ」に気づくようになるだろう。スキーマとは言い替えれば、心の奥底に眠っている思い込み。「自分はダメな人間だ」「すべての人に愛されなくてはならない」「他人はみんな自分を利用しようとしている」などだ。自動思考は、このスキーマから生まれてくるのである。
こうして、自分の心について客観的に知ることができたら、実際に直面している問題や、人間関係のこじれを解決することも可能になる。最終的には、スキーマそのものも克服することができるに違いない。
問題は、ストレスを抱えている「あなた」にあるのではなく、「あなたの考え方」にある。人を変えることはできないが、考え方を変えることは可能だ。ストレスがたまっているな、と感じたら、ぜひ認知療法で自分の心をコントロールしてみよう。