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食生活を見直して!もっと摂りたい食物繊維

美容や健康によいことで知られる食物繊維。しかし、ほんの30年ほど前までは、消化できないために小腸から消化・吸収される栄養素の利用を妨げる食品として軽視されていたのである。食物繊維不足といわれる現代、食品研究の世界も進歩し、最近の研究で改めてわかったこともいろいろあるようだ。今回はそんな食物繊維についてご紹介しよう。

食物繊維の役割・特徴

食物繊維とは、食品中の成分のうち、人間の消化酵素で消化されにくい成分の総称である。比較的名称が知られているものを簡単にまとめたのが以下だ。なかには、最近の健康情報によく登場するものもあるので、耳にしたことがあるという方も多いだろう。

水溶性食物繊維

水溶性食物繊維

粘性があり保水性が高いのが特徴。大腸内で微生物が分解する。 糖分の吸収速度を緩やかし、食後の血糖値が急激に上昇しないように抑えるため、糖尿病の予防や改善に役立つ

  • ●ペクチン…熟した果物、かぼちゃ、キャベツ、ジャガイモ
  • ●ガム質…豆、大麦、オーツ麦
  • ●ヘミセルロース…海藻類

不溶性食物繊維

不溶性食物繊維

水分を吸着保持して腸内の有害物質を体外に排出するはたらきがあり、便の容積を増して排便を促進する。 その結果、便秘の予防や改善に役立つ

  • ●セルロース…りんご、大豆、ごぼう、穀物
  • ●ペクチン…未熟な果物、野菜
  • ●キチン…えび・かにの殻
  • ●イヌリン…ごぼう

生活習慣病と食物繊維の関係

食物繊維は、よく噛む必要があったり消化が遅いため、過度な食欲と食べ過ぎを抑え、肥満予防につながる。また、コレステロール値を減少させ、その結果、動脈硬化の予防効果が期待できる。食物繊維は、気になる生活習慣病予防にも役立つのだ。しかし、これで万能というわけではないので、あくまで過信は禁物だ。

心筋梗塞

ハーバード大学のエリック・リム博士らが、1986年から6年間、医療従事者43,757名を対象に行ったアンケート調査によると、食物繊維の摂取量が少ない人ほど心筋梗塞の発症率が高く、多い人ほど低いことが明らかになった。

糖尿病

糖分の吸収速度を緩やかにするほか、低エネルギーで便のカサを増やすなど、インスリンの活動をあまり刺激しない食物繊維は糖尿病予防に役立つ。東京慈恵会医科大学の森豊講師らによるラットを使った実験で、食物繊維の摂取量が多いラットほど発症しにくいという結果が出ている。

大腸がん

便の量を多くし、水分や老廃物を吸収して早く体外に排出する食物繊維は、大腸がん予防に役立つとされてきた。しかし、2000年代に入って、欧米や日本でいくつか食物繊維の大腸がん予防効果を否定するような臨床試験の結果も出ている。

万能選手でないとはいえ、食物繊維が健康や美容に有用なことはたしか。最近は、環境ホルモンのダイオキシンを排出する作用があることもわかってきている。魚介類や肉類、穀物などに含まれているダイオキシンを知らずに摂ってしまう可能性を考えれば、心強い味方といえよう。

ぜひ食生活を見直して!

食物繊維の摂取量の目安は大人で20~25g。しかし、戦後、食生活が大きく変わった日本人の食物繊維摂取量は減ってきている。戦後すぐは食糧難だったとはいえ、1947年には1日27gも摂っていたのに対し、1985年には17gしか摂取していない。ちなみに、この間摂取量が減少した食品は米、大麦、さつまいも。できれば、ごぼうなどの根菜類や豆類、海藻などを積極的に摂りたいところである。

また、精白した穀類は食物繊維が少ないので、ご飯を玄米や分搗き米にしたり、全粒粉小麦のパンや小麦ふすまを使用したシリアルなど、食生活の一部を変えるだけでも食物繊維の摂取量は増やせる。自分なりに工夫した食生活を心がけよう。

工夫した食生活

公開日:2004年10月18日