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「乳酸は疲労の原因物質」という考えは、もう古い!

日ごろの家事や仕事などで体に疲れが残っていると、せっかくの休日の遊びにも、今ひとつ気が乗らないもの。そもそも、「疲労」とは何なのでしょうか。今回は、疲労の実態について徹底分析します。

エネルギーが生まれるシステム

疲労について説明する前に、まず体を動かすエネルギーがどこからきているのかを考えてみましょう。

人間の体は、多くの細胞で構成されています。私たちが体を動かすときに消費されるエネルギーは、一つひとつの細胞のなかにあるミトコンドリアで作られるATP(アデノシン三リン酸)という物質として蓄えられています。ATPは、アデノシンという物質に3つのリン酸が結合したもので、これが分解されるときに、筋肉が収縮するためのエネルギーが放出されます。ただ、ATPは筋肉中に少ししかないため、活動を続けるには、使うたびにすぐに産生しなくてはなりません。

エネルギーが生まれるシステム

人間のエネルギー源として知られる、炭水化物のうちの糖質は、ブドウ糖へと分解され、やがてATPに変換されます。激しい運動をするときなどは、十分なエネルギーを作るのに、食事から得られたブドウ糖だけでは足りなくなることがあります。このとき、筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンという糖の一種を、ブドウ糖の代わりに分解することで、体は再びATPを産生できるようになります。

乳酸は疲労時に増加しているが、疲労の原因ではない

ブドウ糖が分解されて作り出される「乳酸」

ブドウ糖が分解される際、ATPと同様に作り出される物質があります。それが「乳酸」です。疲れを感じているときは、筋肉や血液中の乳酸が増加しているため、かつてはこの乳酸こそが、疲労の原因物質だとみなされていました。その後の研究で、乳酸自体が疲労の原因ではないことが明らかにされています。疲労の仕組みはまだはっきりとは分かっていませんが、乳酸が作られる過程で、筋肉のpHバランス(酸性とアルカリ性のどちらに傾いているか)が酸性に傾くことが、疲労の原因の一つだと考えられています。乳酸は一時的に増加しますが、エネルギー源であるグリコーゲンを作るのに使われるため、やがて減少していきます。

すっぱいものはなぜ疲れを癒す?

疲れているときに、なぜか食べたくなるのがすっぱいもの。酸味の成分であるクエン酸や酢酸には、乳酸を水と炭酸ガスに分解するはたらきがあります。さらに、新しい乳酸が作られるのを防ぐため、疲れを癒してくれます。「疲れたな」と思ったら食べるようにしましょう。

疲れをとるコツ

効率的に疲れをとるには、どんな点に注意すればよいのでしょう?

日ごろから運動を

1. 十分な休養と睡眠をとる

眠っているときは、筋肉が弛緩して休養状態になります。運動後、きちんと休憩をとって体を休めることも大切です。

2. マッサージやお風呂も効果的

滞った血行を促進するために手っ取り早いのが、マッサージ。また、ぬるめのお湯にゆっくりとつかるのもおすすめです。血行が良くなったことで、血液中の乳酸が肝臓へ運ばれて処理されやすくなり、疲労感を軽くできます。

3. 日ごろから運動を

普段から運動していない人は、血液循環も悪く、血管も未発達。乳酸を効率的に減らすためには、適度な運動をしましょう。
適しているのは、大量の酸素を取り込む「有酸素運動」です。代表的なのはジョギングやウォーキング、水泳などで、腹筋やバーベルといった、息を止めて力を入れる「無酸素運動」は向かないので注意しましょう。

4. きちんと栄養補給

豚肉などに含まれるビタミンB1は、疲労を回復させるはたらきがあると言われています。また、運動ストレスを解消するビタミンCも大切です。もちろん、エネルギー代謝をおこなうための炭水化物や、細胞を活性化する各種ビタミン、ミネラルもきちんと摂取したいもの。

公開日:2017年1月10日