薬や保存料として昔から人々に活用されてきたスパイス。スパイスたっぷりのカレーは、食欲をそそるだけでなく発汗を促して放熱するため、実は暑気払いにはピッタリ!そんなスパイスの効用をご紹介。
そろそろ梅雨も終わり、今度はむし暑い夏がやってくる。この時期、暑いからといってつい冷たいものばかり飲み食いし、夏バテしがちな人もいるのでは?こんなときは、インドやほかの暑い国を中心に愛されてきた、スパイスたっぷりのカレーはどうだろう。これらの国で常用されているスパイスこそ、実は夏の暑気払いにぴったりなのだ。
コショウやターメリック(ウコン)、カルダモンなど、カレーに使われる代表的なスパイスのルーツを辿れば、原産地はインドというものが多い。そんなスパイスの発見には、あのお釈迦様が関わっているという説がある。昔むかし、お釈迦様が修行のため山ごもりしたとき、飢えをしのぐために食べた木の実、草の根、香草の葉。これらを、下山した先の村に不老長寿の薬として伝えたそうだ。ちなみに、この村の名前が「カレー」だったから、スパイスを使った料理をカレーと呼ぶようになったとか。
伝説は別として、インドで古くから伝わる「アーユルヴェーダ」という医学では、スパイスを薬として使ってきた。中国やエジプトでもスパイスは薬だったのだ。中国の「医食同源」という言葉はよく知られているが、日々の食事で疲労回復、病気治療、滋養強壮の効果を求める思想は、これらの国のスパイスを上手に使う食生活にも現れている。
熱帯地方でスパイスを多用する辛い食べ物が好まれるのは、辛いものを食べると血流がよくなって、体温が上がり、発汗が促されるからだ。汗は、体内にたまった熱を皮膚から逃してくれるため、暑さをしのぐひとつの方法となり得るのだ。
では、どんなスパイスにはほかにどのような効用があるのだろうか?カレーに使われる代表的なスパイスを調べてみよう。
酸化を防止することから、中世ヨーロッパでは肉の保存に使われていた。発汗作用があるので、風邪のときは、スープにコショウを多めにふりかけて食べるとスッキリする。
原産地 | インド南西部 |
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使用部分 | 実 |
主な薬効 | 健胃、防腐、食欲増進、発汗、消化促進 |
古代インドでは頭痛薬や脂肪を取る目的に使われた。アラブではカルダモン入りのコーヒーが、日中の暑気払いとして欠かせないものという。丸ごとかむと眠気覚ましにも効果あり。
原産地 | スリランカ、インド南部 |
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使用部分 | 種 |
主な薬効 | 健胃・整腸、口臭防止、精力増強 |
ターメリックとは、沖縄の健康食品として注目されているウコンのこと。カレーやたくあんの色づけに活躍。抗酸化作用や浄化作用などがあり、血液をきれいにする。脂肪の分解にも役立つ。
原産地 | 熱帯アジア、インド南部 |
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使用部分 | 根茎 |
主な薬効 | 鎮痛、健胃、肝臓病、糖尿病、息切れ |
独特の強い香りはまさにカレー。ゆえにカレーを構成する重要なスパイスの一つとなっている。個性が強いので、一度にたくさん使わないように注意が必要。食欲増進効果がある。
原産地 | 地中海沿岸、エジプト |
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使用部分 | 種 |
主な薬効 | 消化促進、下痢、腹痛、胃痛 |
挙げた以外にも、シナモンには発汗作用、クローブやオールスパイスは食欲増進など、ポピュラーなスパイスには暑気払いや食欲不振の解消にはぴったりの効用がある。ただ、クセの強い味や香りがあるものも多いので、慣れていない人は、スパイス売り場に置いてある「ガラムマサラ」がオススメ。
これは、いろいろなスパイスをミックスしたもので、インドでは各家庭で異なるブレンドがあるという、いわばインド版「お袋の味」だ。1種類で使うより香りもマイルドになるので使いやすい。また、いくつものスパイスを組み合わせる相互作用で薬効が高まり、より強い効果が期待できる。これを家庭に常備しておき、いつものカレーにかけてもよいし、野菜炒めや肉を焼くときに振りかけてもよい。カレーが苦手な人でなければ、スパイシーな香りが食欲を増してくれること請け合いだ。