衛生大国・日本。だが油断大敵!高温多湿の風土に加え、生ものを好むお国柄、食中毒事件は後を絶たない。食中毒でもっとも怖いのは、病原大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌。とくに腸管出血性大腸菌O157は、重症合併症を発症することも!梅雨時は冷蔵庫の詰めすぎや、常温解凍を避けるなどの配慮が欠かせない。感染してからでは後の祭り。万全の予防を心がけよう。
ほとんどの大腸菌は、じつは人間にとって無害なものばかり。むしろ腸内でビタミンや抗生物質、乳酸などを生成し、消化器系に侵入してくるさまざまな細菌を退治してくれる、ありがたい存在なのだ。 ところが、なかには体内に入り込むと腸炎を引き起こすものもある。これが病原大腸菌だ。とくに腸管出血性大腸菌O157は、抵抗力の弱い子どもやお年寄りなどの場合、溶血性尿毒症症侯群や脳症などの重症合併症を発症することも!
感染ルート | 食肉、生レバー、食肉加工品、その他の食品、井戸水などの飲用水(保菌家畜の糞便に汚染された食肉のほか、二次感染によりさまざまな食品が原因となる可能性あり!)糞便などの接触による、人から人への感染も |
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症状の特徴 | 腹痛、下痢、血便。重症化すると、死に至る場合もある |
潜伏期間 | 3~5日 |
サルモネラ食中毒は、「文明病」とも呼ばれている。おもな汚染源は家畜や、鶏・アヒルなどの家禽(かきん)。つまり、豊かな食生活をしている国ほど、多発するのだ。日本でも高度経済成長期を経て、次第に増えるように。 ちなみに昭和40年当時、サルモネラ属菌による食中毒発生事件数は50件。平成14年では465件!(厚生労働省調べ)なかでも手ごわいのがサルモネラ・エンテリティディス。低温や乾燥にも強く、冷凍庫の中でもしっかり生き延びるのでやっかいだ。
感染ルート | 食肉・卵類。ネズミ・ハエ・ゴキブリや、ペットから感染することも |
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症状の特徴 | 腹痛、吐き気、下痢、発熱など |
潜伏期間 | 6時間~3日 |
寿司、刺身好きの日本人が頭を痛めてきたのが、この腸炎ビブリオ菌。好塩性のため、海産物に発生しやすい。増殖スピードが速く、とくに海水の温度が上がる季節は注意が必要。加熱処理すればさほど心配する必要はないが、問題は魚を処理した後のまな板。よく洗わずにそのまま使うと、二次汚染が起こりやすい。
感染ルート | 魚介類や刺身、その加工食品など |
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症状の特徴 | 下痢、腹痛、はき気、嘔吐、発熱、血便、頭痛。重症化すると意識障害や、しびれ、虚脱、チアノーゼなど。ごくまれに死亡するケースも |
潜伏期間 | 2~18時間 |
ノロウイルス(小型球形ウイルス)は、年間を通して活発だ。生カキの関与が強く指摘されており、冬季を中心に感染者が増える傾向に。潜伏期間は1~2日。下痢、吐き気、腹痛、発熱が起こるが、たいてい3日以内で回復する。糞便により、人から人へ感染しやすい。
食中毒を防ぐ3原則は、細菌を「予防」「殺菌」「増やさない」。万が一「感染したかな」と思ったら、すぐ専門医を受診しよう!