疾患・特集

「喫煙者は損!」する時代がやってきた

公共施設や交通機関、飲食店でも禁煙とする所が広がりつつある。また生命保険にも非喫煙者向けの割引きサービスが登場するなど、喫煙者は経済的にも損をする時代である。もう一度、健康のリスクについて考えてみよう。

「世界禁煙デー」にたばこを見直そう

5月31日は世界禁煙デー

5月31日は、1988年の第1回から今年で17回目となる世界禁煙デーだ。世界保健機関(WHO)が、喫煙者に対しては24時間喫煙を控えるように、また各国の政府・自治体・諸機関・個人に対しては、喫煙と健康問題の認識を深めて適切な対策の実践を求めるという日である。日本では、この日から1週間を「禁煙週間」とし、厚生労働省が記念シンポジウムを開くなど、この時期は禁煙に関するイベントが各地で行われる。

喫煙者の中にも、たばこが体によくないことは知っていても、なかなかやめられない人もいるだろう。嫌煙派にも、日々たばこで嫌な思いをしている人が少なくないのでは?両者とも、この機会に改めて、今どれだけ社会が禁煙ムードになっているか、知っておくのも悪くないのではないだろうか。

禁煙スペースはこんなに広がっている!

千代田区禁煙スペース

東京都千代田区が、指定地区の路上喫煙者に、2000円の罰金を課す条例を定めたのが2002年10月。当時はニュースなどで大きく取り上げられたので、覚えている人もいるだろう。また、東京都中央区、品川区、杉並区でも同様の条例が導入された。

学校や郵便局、市役所といった公共施設に関しても、全国に禁煙エリアが広がっている。よく知られている「スターバックスコーヒー」をはじめ、「松屋」「大戸屋」「CoCoカレー壱番館」などの各種チェーン店、プロ野球球場スタンド、銀行のロビーなども今や禁煙である。

喫煙スペース

交通機関だって例外ではない。JRのホームでは喫煙スペースがあるが、コンコース内は禁煙だし、飛行機、各地の地下鉄は全面禁煙である。まだ1%に満たないものの、タクシーにも禁煙車が登場している。禁煙タクシーが認可制から届出制になったことで、今後はさらに増える可能性がある。こういった禁煙スペースの広がりは、非喫煙者にとってはありがたい動きといえるだろう。

喫煙者は経済的にも不利になる!?

たばこの最大の問題は健康被害の可能性である。そういった健康のリスクを心配するのは、家族や友人といった身近な人たちだけではない。

喫煙者は経済的にも不利になる!?

2002年6月にAIGスター生命が、非喫煙者の保険料を割引く「がんケア・すわナイス割引」を発売したのを皮切りに、現在12の生命保険会社が「ノンスモーカ保険」を売り出している。外資系保険会社が中心であるが、大同生命やあいおい生命など日本の保険会社も含まれており、大半が格付けも「優良」と、非喫煙者がトクをする状況となっている。

さらに、今後は就職でも不利になっていく可能性が出てきた。というのは、社内禁煙の流れが強まるなか、喫煙者を採用選考の対象にさえしない企業も登場しつつあるからだ。このような企業が今後増えるのかどうか、気になる動きではある。

一服の楽しみと健康を天秤にかけると…

一服の楽しみと健康を天秤にかけると…

たばこを吸う人も、吸わない人も、健康によくないことはご承知だろう。たばこの煙を吸うことで、頭痛や心拍増加、血管収縮などの影響がある。また、喫煙者、煙を吸った非喫煙者とも、長期的には肺がんや呼吸器疾患などの被害が予想される。もちろん、たばこを何十年も吸い続けても健康に問題がない人だっているのだから、一概には言えないとはいえ、リスクは大きくなる。

2004年4月23日に厚生労働省の研究班が発表した、喫煙とがんについての調査報告と試算結果によると、喫煙者のがん発生率は、たばこを吸ったことがない人と比べて、男性で1.6倍、女性で1.5倍。さらに、がん患者の5人に1人はたばこが原因であることがわかった。

たばこを吸うことが何よりの楽しみで、仕事の能率も上がるという人は、あくまで可能性に過ぎないリスクを背負ってたばこ人生を満喫する方法もあるだろう。ただし、これからの時代は、自分の行動範囲で気兼ねなくたばこを吸えるカフェや飲み屋を、少なくとも1~2軒は確保しておく必要があるのかもしれない。

公開日:2004年5月17日