心身を癒してくれるアロマセラピー。香りを嗅ぐことは、古い脳を刺激し、バランスのよい精神状態を保つのに役立つ。
アロマセラピーとは、植物から抽出した100%ピュアな香りのエッセンスを利用して、健康や美容に役立てる方法。人間が本来もっている自然治癒力を植物の力を使って高める「植物療法(フィトテラピー)」のひとつだ。
精油の蒸留は5,000年前には行われていたといわれるが、現在のアロマセラピーの基礎が確立されたのは20世紀初頭。その後、マルグリット・モーリー夫人がイギリスで美容に用いる手法を確立し、「ホリスティック・アロマセラピー」へと発展していった。
ホリスティック・アロマセラピーの特徴は、精油を使って自律神経のバランスを整え、心身を常に一定の状態(ホリスティック)に導いていくこと。精油は多数の成分が混在した複雑な構造をしているため、効果はひとつだけにとどまらない。つまり、心身のバランスを総合的に整えるために用いることができるのだ。
アロマセラピーは、皮膚を通じて精油成分を吸収させるほかに、嗅覚を通じて吸入させる方法がある。この「吸入」の手法は、心理的な効果が非常に大きいといわれる。なぜなら、視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚という5つの感覚のなかで、嗅覚だけが唯一、いわゆる「古い脳」を直接刺激することができるからだ。
人間の大脳は、外側に理性を司る「大脳新皮質」があり、内側に感情や本能、記憶を司る「大脳辺縁系」がある。それぞれ俗に「新しい脳」、「古い脳」といわれている。嗅覚以外の4つの感覚から伝わった情報はまず「新しい脳」である大脳新皮質を通ってから、「古い脳」である大脳辺縁系に送られるが、嗅覚を通じた情報だけが直接、「古い脳」である大脳辺縁系に伝わる。
芳香をかぐことで「古い脳」を活性化させることは、豊かな感情を取り戻すことやストレス軽減に役立ち、バランスのよい精神状態を保つのに役立つと考えられているのだ。
精油の種類はたくさんあり、その効果もさまざま。効能効果で精油を選びたいという人も多いと思うが、アロマセラピーの基本は自分に合う香りを用いること。実際に香りをかいでみて、自分が気に入った精油を使うのが最も適しているといえる。1種類だけを用いてもよいし、数種類の精油をブレンドすることもできる。ブレンドはそれぞれの精油の特性を生かすためにも、4種類までが目安。
疲れたときや、落ち込んでいるときにティッシュに1~2滴垂らしたり、バスタブに3滴ほど垂らして香りを楽しみ、気分をリフレッシュしよう。これらは比較的安価で手に入れやすい精油なので、ぜひ試してみて。
ローズマリー | 心身を活気づけて、疲労や無気力感を改善してくれる。肌のひきしめ作用があるため、スキンケアにも |
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ゼラニウム | 気持ちを高揚させ、不安定な気持ちを癒してくれる。ホルモンの分泌を整える作用があるため、月経トラブルや更年期障害にも |
イランイラン | 精神の緊張を解き、安心感や気分の高揚感を与えてくれる。官能的な気分にさせてくれる効果も |
グレープフルーツ | 気持ちをリフレッシュさせ、生きることに前向きな気持ちにしてくれる。食欲の増進や、セルライト解消の効果も |
教えていただいたHMCAアロマスクール 小林ケイ先生
アロマセラピスト。
HMCA Aroma School(日本アロマコーディネーター協会加盟校)代表。
精油は香りを楽しむだけでなく、ミネラルウォーターやホホバオイルなど、さまざまな基材で希釈してトリートメントを行ったり、リラクセーションに用いたりすることもできる。基本は、精油の希釈濃度を1%以下にすること(ブレンドの場合も合計で1%以下)。精油1滴が0.05mlであるため、基材の量によって使用する滴数は変わってくる。