漢方専門薬局も増え、メディアでも盛んに取り上げられるようになった「漢方薬」。そもそも漢方とは?西洋医学とどう使い分ければよいのか?どこで処方してもらえばよいのかなど、漢方のいろはをご紹介。
お話をうかがった
(社)北里研究所東洋医学総合研究所
漢方診療部
医長 鈴木邦彦先生
最近、漢方専門薬局も増え、メディアでも盛んに取り上げられるようになった「漢方薬」。漢方専門雑誌もあるとか。
漢方医学といえば、中国に源流を持ち、江戸時代まで日本でも長く発達してきた医学だ。しかし、脱亜入欧を目指した明治時代、西洋医学を修めた者だけが医師免許を取得した正式な医師とされるようになってから、医療の表舞台からは忘れられた存在となった。再び動きがあったのは、昭和に入ってのこと。医師たちの間で漢方医学を見直す動きが起こり、やがて、漢方薬を処方したり、漢方医学を学ぶ環境が整えられていった。
1860年代まで | 漢方医が日本の医師の中心 |
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1882年 | 医術開業規則および医師免許規則布告 ヨーロッパ医学を政府が正式の医学として認め、漢方は衰退していく |
1950年 | 日本東洋医学会設立 医師が勉強会などを設立して漢方の研究を行う |
1972年 | 北里研究所附属東洋医学総合研究所設立 日本初の近代的な東洋医学の総合診療研究機関となる |
1976年 | 医療用漢方エキス製剤保険薬値収載 健康保険を使って漢方薬を処方できるようになる |
1989年 | 日本東洋医学会漢方専門医制度発足 |
2001年 | 漢方薬生薬認定薬剤師制度発足 |
2002年 | コアカリキュラムへの導入 医学部で東洋医学がはじめてカリキュラムに組み込まれる |
西洋医学の診察は、個々の症状を聞いて、病名に応じて薬を処方するなり検査を行う。
一方、漢方はその人の体質や年齢、性別、生活歴まで含めて聞き、脈を測ったり顔色や声の様子をみたりと、全身の状態を確かめ、「証」を確定する。そのうえで、さまざまな生薬の組み合わせである「処方集」(レシピ集のようなもの)と照らし合わせて、ふさわしい薬を選んで処方する。
日本の場合、漢方医も西洋医学の医師免許を持っているので、必要に応じて西洋医学の血液検査などの検査も含めた治療が可能。基本的には、西洋医学だけではカバーできない分野を治療するのが東洋医学と考えればよいだろう。
東洋医学の治療法は、鍼灸などの物理療法と、漢方薬を使って治療を行う湯液(とうえき)療法に分かれる。漢方薬は、最近では海外旅行のおみやげなどで、手軽に手に入れるケースも増えているようだが、薬剤師や専門医が立ち会わないものは選び方に注意が必要だ。
中身の安全性が確認できない場合もある。必ず、内容を確認できる連絡先などが明記されている薬を使おう。
ちなみに、漢方薬はほとんどがいくつかの生薬を組み合わせて処方されるもの。グアバ茶やどくだみ、ゲンノショウコといった天然物を単独で煎じた薬はいわゆる民間療法で、漢方には定義されない。
また、ほとんどの漢方薬は健康保険が適用されるが、それは一定の既製品に限った場合。天然のものを薬に使う漢方の場合、品質はさまざま。漢方薬局や医師にかかって薬を選ぶ場合は、症状や経済状態などを配慮し、医師や薬剤師と相談したうえで、必要に応じて検討しよう。
取材協力・資料提供:社団法人 北里研究所東洋医学総合研究所漢方診療部