正月の定番料理に欠かせない「みりん」。実は、室町時代末期から江戸時代には栄養ドリンクとして飲まれていたほど、栄養豊富な発酵食品なのです。甘味とおいしさを増すだけではないみりんの効果に注目!
お屠蘇に、煮しめ、田作り(ゴマメ)、数の子…。まもなくやって来るお正月の定番料理に欠かせない「みりん」。洋食、中華にエスニックと、国際色豊かになった現代の食卓では目立たない存在ですが、以前は和食には必要不可欠と言ってもよい調味料でした。
おせちや煮物など なぜなら、冷蔵庫などない時代、アルコール分を含んだみりんは料理の保存料としての役割を持っていたからです。日持ちすることが前提のおせち料理に使われているのも、そうした理由からとなります。
また、みりん独特の甘味と旨み、香りは、魚料理の臭み消し、煮物の照りやツヤ出しに適しています。原料の米に含まれているさまざまな成分が酵素で分解されているため、アミノ酸を含む醤油と組み合せることによって、旨みとコク、ツヤ、香りが料理を引きたてるのです。
みりんが誕生したのは、焼酎が日本に伝わった室町時代末期から江戸時代にかけて。甘い酒が好まれた江戸時代は高級酒として珍重されました。また高級甘味料としても用いられていたようです。この時代、砂糖を入手することは難しく、甘味は不足しがちなものでした。
ところで、俳句では、甘酒が夏の季語とされているのをご存知ですか?かつて、甘酒は夏場の滋養強壮として飲まれていました。そして、みりんも甘酒と同様、スタミナ切れになりやすい夏場の滋養強壮のために、冷用酒として飲まれていたようです。
現在では、みりんを飲用にする習慣はほとんど残っていません。第2次世界大戦後の物不足以降、米麹、もち米を焼酎で仕込む昔ながらの製法がすたれていき、飲用に適したみりんがあまり流通しなくなってしまったからです。
戦後は限られた米でたくさんのみりんを作ろうと、醸造用アルコール、水あめなどを添加したものが「本みりん」として売られました。そして、昭和40年代以降に増えたスーパーマーケットでは、酒類の取扱いができなかったため、でんぷんや水あめなどを混ぜて作るみりん風調味料が誕生したのです。
種類 | アルコール度数 | 作り方 |
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伝統的な本みりん | 約14% | 本格焼酎に蒸したもち米、米麹を加え、約40~60日熟成させる。その後、袋に入れてろ過し、タンクに入れて貯蔵します。現在ではほとんど作られていません。 |
一般的な本みりん | 約14% | 蒸したもち米と米麹に、アルコールと水あめ、添加物などを加えて味を調整します。40日ぐらいの短期間でできあがります。 |
みりん風調味料 | 1%未満 | でんぷん、水あめ、化学調味料などを合成して数日ぐらいで作ります。みりんの類似物として、成分をみりんに近づけたものです。 |
もともと酒の一種だったみりんは、日本酒や醤油、みそなどと同じく、発酵食品である「麹」を使ったものです。
みりんの原料は米麹 みりんの原料である米麹は、米のたんぱく質はアミノ酸に、でんぷんはブドウ糖や麦芽糖といった吸収されやすい形に分解されています。また、麹菌が米の表面で繁殖するときには、ビタミンB1、B2、B6などのビタミンB群を大量に生成します。江戸時代の人々が栄養ドリンクとして飲んだのも、なるほどとうなずける栄養豊富な食品なのです。
ほとんどの家庭で常備している「みりん」ですが、みりんほど知られていない調味料もないでしょう。上質なみりんを使えば、健康によいだけでなく、いつものおかずが一段と上品に、料理の腕前を家族から見直されるかもしれません。数は少ないのですが、現在でも飲用のみりんが売られているので、興味のある方はぜひお試しを。