私たちは普段、まったく無意識に息をしています。しかし、呼吸とは生きている間、絶え間なく続けるもの。人は一生の間に、なんと6~7億回も息をするといいます。呼吸の仕方ひとつで、心身の健康は大きく左右されるのも道理です。「たかが呼吸」と侮らず、ぜひ正しい方法を身につけて、元気度をアップしましょう。
イライラしているとき、不安なとき、焦っているとき――そんなとき、いつのまにか呼吸は浅くなっているもの。浅い呼吸とは、肩や胸だけでおこなっている呼吸のことです。
浅い息は、肺の一部にしか酸素を届けることができません。そうなると、体や心に好ましくない影響が出てきます。これは、血管中の酸素が不足してくるためです。最もダメージが大きいのが、酸素を最も必要とする脳となります。普通の筋肉細胞を1とすると、脳の神経細胞はその20倍の酸素を摂取しなければならないからです。
また、呼吸と自律神経は深い関係にあります。深くゆっくりと息をしていれば、リラックス時にはたらく副交感神経がスムーズに動き、ホルモンの分泌や免疫のはたらきが正常になります。しかし、つねに浅い呼吸を続けていると、この仕組みが狂ってきます。副交感神経のかわりに、緊張したときに動き出す交感神経ばかりがはたらくようになり、体のあちこちに支障があらわれます。
このように、浅い呼吸は脳や自律神経に影響を及ぼし、ストレスをますます増幅させてしまいます。また酸素不足により、内臓の機能低下も招きかねません。
ストレス病、自律神経失調症、呼吸関連筋肉群の凝り、背骨のゆがみ、胃などの内臓・肋骨の下垂、肝機能の低下、便秘、呼吸器系疾患
気がつくと、口をあけっぱなし。口だけでハアハアと息をしていた――そんなことはありませんか?「呼吸は鼻で」。実はコレが正しい呼吸の大前提なのです。
鼻の穴の奥にある鼻粘膜には、細かい繊毛がじゅうたんのようにびっしり生えています。そこからつねに粘液を分泌し、外界から入ってくる異物を排除してくれます。ところがこれが口だと、そうはいきません。排気ガスやホコリ、ちりなどがいくらでも肺に吸い込まれてしまいます。結果的に風邪、肺炎ばかりでなく、健康状態によっては深刻な疾患も引き起こしかねません。
さらに、免疫力が低下し、アレルギー症状が起こることもあります。アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などは、口呼吸が一因となっているケースも少なくないようです。
とくに怖いのは口をあけて寝ている間に舌で喉がふさがり、呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症」です。昼間に眠くなるだけでなく、最悪の場合は体力の消耗から突然死につながることも。
ところで、あなたは口呼吸をしてはいませんか?下のチェック項目で3つ以上当てはまると、口呼吸の可能性大です!
3つ以上当てはまると、口呼吸の可能性大!
こうした呼吸の影響力に着目し、反対に意識して息を整えることで、心身の状態をコントロールする――これが呼吸法です。人前で話すとき心を落ち着けるために深呼吸したりするのも、呼吸の力に着目した知恵といえます。ヨガや気功はその最たるものでしょう。
それでは実際に、呼吸法をおこなってみましょう。ここで紹介するのは、最も簡単な「腹式呼吸法」です。深く、ゆったりと息をするためには、お腹で呼吸する「腹式呼吸」が一番です。といっても、まさかお腹そのもので息はできません。下腹を膨らませたり引っ込ませたりすることで、腹圧により深さやリズムを整えるのです。
腹式呼吸は、できれば毎日の習慣にしたいもの。天気のよい日などは戸外でおこなってみるのもよいでしょう。続けるうちにちょっとしたストレスや体の不調感とも、きっとサヨナラできるにちがいありません。