日本人の平均身長は男性が約171cm、女性158cm、体重は男性約67kg、女性約54kg(「四訂食品成分表2000」30代のデータより)。さらに男性は、女性より平均して体脂肪が少ない…。こうした性差は、もちろん体内のさまざまな器官にも存在する。今回は、こうした男女のカラダの違いが、発症率の差となっていると考えられる病気をご紹介しよう。
「風が吹いても痛い」とよく言われる痛風は、患者全体の約99%が男性、特に40代の男性に多い病気。ある日突然、足の親指のつけ根(この部位に症状が出る人が約70%と最も多い)が激烈な痛みに襲われるのが初期症状だ。その痛みは人によっては「ペンチで思い切り締めつけられているよう」だとも「キリでえぐられるような痛み」だともいう。想像するだけでも怖ろしくなる痛さだ。
だが、この痛みは2~3日でやわらぎはじめ、10日もするとなくなってしまうため、患者の中には「治った」と勘違いして治療を受けずに放置してしまうケースもあるようだ。痛風は、初期症状が治療スタートのシグナル。ここでしっかり治療をはじめないと、1~2年後にまた痛みの発作が起こり、その後は発作のサイクルがどんどん短くなっていくのが特徴。しかも、痛風は、体内の異常事態を知らせるシグナルでもあり、放置すると肝臓病や糖尿病などを併発しかねない病気でもあるのだ。
痛風の原因となるのは尿酸。高カロリーな食事や、処理機構に何らかの問題が起きて体内に尿酸が増え過ぎると、関節などに尿酸が溜まってしまう。その状態が何年も放置されると、尿酸が結石化し、激しい痛みとなって襲ってくるのだ。つまり痛風は、高尿酸血症の人が行き着く先ともいえる。
男性が圧倒的に多い理由は、もともと女性より尿酸量が多いため。尿酸は、プリン体という物質を分解した老廃物。だが、もうひとつの側面として、体内の活性酸素を抑えるはたらきがあるともいわれている。男性の場合は、女性より筋肉量が多く、体内で活性酸素ができやすい。それを抑えるために、女性より尿酸が多いカラダの構造になっているといわれているのだ。
さらに、女性の場合は、女性ホルモンが尿酸の排泄を促すため、尿酸値が増え過ぎることが少ない。もちろん女性でも、病気や閉経などによって女性ホルモンが減ると、尿酸値が増えることもある。
健康診断で尿酸値が高めなら、今から予防に努めよう!
古い細胞を分解する途中や、激しい運動をしたときのエネルギー代謝によって体内でつくり出される物質。また、動物性脂肪やビールなどにはプリン体が多く含まれ、食事によって摂取されるプリン体もある。
以上が基本の予防ポイントだが、これらはどこかで見たことがあるはず。そう、生活習慣病全般に言えることなのだ。さまざまな病気の予防を兼ねて早速、実行しよう。さらに、痛風特有のポイントとして、以下の2点も予防の要となる。
尿路結石は、男性のほうが女性の約2倍も発症しやすく、40代を筆頭に、30代でも多い病気。自覚症状としては、夜中や早朝に「疝痛(せんつう)発作」と呼ばれる激痛に襲われるのが特徴。鋭い痛みが腎臓のある辺りから背中、脇腹、下腹部へと広がっていき、時には血尿や吐き気などを伴うこともある。
治療は、結石のできた場所や大きさ、さらに結石の成分によって異なるが、小さな結石なら水分を大量に摂って自然の排出を促したり、薬で溶かす、内視鏡を使って取り除くなどの簡単な方法で完治できる。
ただ、結石は再発しやすいのが難点。5年以内に再発する率は約40%と高く、生活そのものから見直し、予防していかないと、繰り返し結石ができることになってしまう。さらに、放置すれば腎臓の機能に大きな影響を及ぼすこともあるので、早めの治療が大切だ。
治療法についてはさまざまな研究・開発が進んでいる結石だが、原因となると約8割が不明という現状。わずかにわかっているのは、遺伝によってできる結石があることくらいだ。
男性が多い理由としては、男性ホルモンが結石の成分となりやすいシュウ酸を増やすのに対し、女性ホルモンは結石をできにくくするクエン酸を増やすはたらきがあるからだと考えられている。
主に食生活の注意点が多いが、かといって偏った食事になっては意味がない。栄養バランスの良い食事を心がけよう。また、適度な運動によって代謝をスムーズにすることもおすすめだ。