めでたい行事が続き、贅沢なご馳走がずらりと並ぶ、お正月。実は、このご馳走の中にも、先人たちの健康への知恵がいっぱいです。今回は、お正月の飲み物、食べ物に秘められた健康の知恵をご紹介します。
元日の朝に、家族そろって東の方角を向き、年少者から年長者へと順に盃を回します。これがお屠蘇をいただく作法なのだそうです。
このお屠蘇の由来には諸説あり、仙人が考案したといった説もありますが、現在最も有力とされているのは、中国の名医が一年の邪気を払うために作り、配ったのがはじまりというものです。「屠」はほふる、「蘇」は悪鬼の意味で、「鬼気を屠絶し、人魂を蘇生させる」という意味を持ちます。また、昔は、屠蘇を入れた赤い袋を大晦日の夜に井戸の内側に吊しておき、元日の朝に取り出して酒もしくはみりんに漬け込んで飲んだら、最後はまた井戸に袋の中身を投げ入れる習慣だったそうです。
さて、問題の中身ですが、成分はもちろん漢方薬。処方によって8種類のものあり、10種類のものありとさまざまですが、現在主流となっているのは以下の5種類が調合されたものです。
白朮(びゃくじゅつ) | キク科のオケラまたはオオバナオケラの根 | 利尿・健胃・鎮静作用 |
---|---|---|
山椒(サンショウ) | サンショウの実 | 健胃・抗菌作用 |
桔梗(キキョウ) | キキョウの根 | 鎮咳去啖・鎮静・鎮痛作用 |
肉桂(ニッケイ) | ニッケイの樹皮、シナモン | 健胃・発汗・解熱・鎮静作用 |
防風(ボウフウ) | セリ科ボウフウの根 | 発汗・解熱・抗炎症作用 |
胃腸のはたらきを整え、のどや気管支を守るものが主です。風邪の予防にも効果が期待できるとされます。今では薬局などで手軽に手に入るので、今度の正月には、ぜひ飲んでおきましょう。
元日の朝一番にくむ水が、いわゆる「若水」。平安時代には、立春の日に宮中の主水司(もいとのりのつかさ)から天皇に水が献上され、年中の邪気を払い、若返りを祈ったとされ、これがお正月の「若水」の行事になったといわれます。
一般的な若水の使われ方は、手や口、顔を清める、若水でお茶をたてて飲む、沐浴をするとさまざまです。ただ、この行事の根底には、水は老化を防ぎ、健康を保つために重要なものであるといった、水の効用を再確認する意味があったといわれています。
確かに、人間の体は約60%が水分。この水分量が40~50%に低下しただけで生命を維持するのが不可能になるのですから、人間にとって水は非常に重要なものです。また、水分は体内の老廃物を排出するためにも不可欠な存在。うまく排出できないと、体内に老廃物がたまって病気にもなりかねません。私たちも今一度、上手に水分補給することを考えたいものです。
めでたい席、特にお正月に供されるアルコールといえば、やはり「日本酒」でしょう。日本酒の歴史は、稲作がはじまった弥生時代にはじまるとされますが、この当時のお酒は、いわゆる「どぶろく」。その後、米麹が発見され、現代のような日本酒が作られるようになったのは奈良時代あたりからだそうです。
もちろん「御神酒(おみき)」といった言葉があるように、お酒は神々への大切な供物とされ、一般には栄養剤としても飲まれていました。この日本酒にも、効能は多いようです。
ただし、こうした日本酒の効果も、飲み過ぎれば何の意味もありません。また、美肌効果などは、飲むばかりではなく、化粧水にして肌につけたり、酒風呂に入ることでも得られます。飲み過ぎの弊害が大きく取り上げられる昨今、さまざまな効能のある飲み物だからこそ、適量を守り、その効果だけを享受するように努めるようにしましょう。
今度のお正月には、ちょっと趣向を凝らして、次のような飲み物を試してみましょう。味よくめでたく、良いお正月が迎えられそうです。
作り方は簡単!湯飲みに昆布と梅干しを入れ、若水でいれた熱いお茶をそそぐだけ。黒豆や山椒を入れる場合もあります。これは、平安時代に疫病で悩まされていた天皇がこのお茶を飲んで治ったのがはじまりとされる縁起のいいお茶です。
梅干しを軽く火であぶり、盃に入れて日本酒をそそぎ、5~6分そのままにして梅の味や香りが酒に移ったところで飲みましょう。これも梅や桜、菊などの花びらを酒に浮かべて飲む平安時代の風習からきたもの。疲れた体にも効きそうです。