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風邪をひいたとき、その体内は?

もっとも身近な病気である風邪。風邪にはどんなタイプがあるのでしょうか。また風邪にかかったとき体内では何が行われているのでしょうか。薬では治せない風邪に迫ります。

風邪は薬では治らない

風邪

あなたは、風邪と思って病院に行ったら「咽頭炎です」とか「気管支炎ですね」と診断された経験はありませんか。風邪=咽頭炎?気管支炎?
実は、風邪とは医学的には「風邪症候群」と言われ、原因の種類に関係なく、呼吸器系の急性炎症の総称(クシャミ、鼻水、ノドの痛み、咳…)として使われる単語です。症状によって以下のように分類されます。

  • 普通感冒
    いわゆる「鼻風邪」。クシャミや鼻水、鼻づまりが主な症状で、ノドの痛みや咳、発熱などはほとんどないか、あっても軽いことが多いです。
  • 咽頭炎
    ノドの痛みが強く、頭痛や発熱も見られます。
  • 咽頭結膜炎
    代表的な夏風邪の一種で、「プール熱」とも呼ばれます。発熱、咽頭炎、結膜炎の3つを伴います。
  • クループ症候群
    咽頭が炎症を起こして腫れ、独特の咳をします。ひどくなると、息を吸うときにぜーぜー音がします。
  • 気管支炎
    炎症が気管支に及んだ状態です。咳が次第に激しくなり、痰もからみます。
  • 肺炎
    激しい咳と痰が多く、胸の痛みや高熱を伴います。白血球が増加し、レントゲンで肺炎の影が見られます。
  • 異形肺炎
    激しい咳や高熱があるなど肺炎と似た症状ながら、白血球の増加はありません。

こうした風邪症候群の原因は、わずかに細菌などによるものもありますが、約8~9割はウイルスによるものです。しかも、200種以上ものウイルスが原因として確認されているため、例えば今日かかった風邪が、どのウイルスによるものかを特定することは困難となります。特定するべく検査をしている間に治ってしまうことがほとんどなため、ウイルスの特定はしないのが一般的なのです。

また、ご存知の人も多いかもしれませんが、今のところ数少ない特殊なウイルスを除いて、ウイルス自体を退治する方法や薬はありません。
もちろん抗生物質もウイルスに効くわけではありません。抗生物質は、風邪による炎症で傷ついた箇所に雑菌などが入り、炎症を悪化させるのを防ぐもの。炎症のない時点で服用しても何の効果もありません。風邪で薬を飲むなら、症状に合わせて飲むようにしましょう。症状も出ないうちから薬で「早めのケア」をすることは、風邪においては体に余計な負担をかけるだけなのです。

風邪の時々刻々

では、ウイルスが体内に入ったとき、体内ではどんな活動が繰り広げられるのでしょうか。ここで活躍するのが、免疫細胞の数々です。ウイルスを退治する免疫細胞たちの、すばらしい活動を見てみましょう。

ウイルスを退治する免疫細胞たち

熱が出ない体は弱っている!?

体内では、さまざまな免疫細胞が緻密に連携しながらウイルスを退治します。その連携プレーは見事!と言うほかありません。あなたの体内でも、この免疫細胞たちのスーパーなシステムが活動しています。

ただひとつ、ここで注意したいのが、同じような場所で、同じように生活していても、風邪をひく人、ひかない人がいることです。また、風邪をひいても軽くすむ人と、症状が重くなる人がいます。この明暗を分けるのが免疫力です。好酸球やキラーT細胞といった免疫細胞の数とパワーで決まると言ってもいいでしょう。
各種の免疫細胞が弱かったり、数が足りなければ風邪のウイルスに負けてしまいます。それぞれの免疫細胞が健康で強く、適切な数だけ存在していることが肝心です。

また、熱が出たからといって安易に解熱剤を使うのも避けたいもの。免疫システムがなぜ発熱して体温を上げるかといえば、免疫細胞が活発に動きやすくなると同時に、ウイルスや細菌が38.5度以上の体温で死滅するからです。しかも当面の問題である風邪のウイルスばかりでなく、知らないうちに体内に潜んでいたほかのウイルスやがん細胞まで死滅させるというのだから、発熱は一種の体内一掃機能でもあります。風邪をひいて熱が出るのは、免疫システムが正常にはたらいている証拠と覚えておきましょう。

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