なぜ人間は痔になるのでしょうか?歴史上の有名人も痔に悩んでいたという話もあるようです。そのほか、痔にやさしい生活についてもご紹介します。
肛門は周囲にある筋肉(内・外括約筋)と粘膜だけではぴったり閉じることができず、すき間をふさぐために肛門の粘膜の下には細い血管が集まった静脈叢(そう)や平滑筋、弾性繊維などの結合織がつくるクッションと呼ばれる部位がある。実はこのクッション組織、30歳を過ぎる頃から老化が始まると言われている。
また、人間が進化して直立二足歩行するようになったことも、肛門に過酷な状況を作っていると考えられる。人間のように2本の足で立つようになると、上体の体重が肛門の周辺に集中してかかるために、筋肉や血管が収縮し、血流が悪くなって痔を招きやすくなってしまうというわけだ。
「医学の父」「医聖」などと呼ばれるヒポクラテス。彼が生きていた古代ギリシャ(紀元前460年?~370年?)の時代から、痔という病気は既に存在していた。こんな有名人たちも「痔主」のひとりだったとか。
痔は生活習慣病のひとつ。毎日の生活を見直すことで予防や改善ができるもの。
痔の原因、便秘を解消するためには食物繊維が欠かせない。野菜、豆類、穀類、海草やきのこなどを十分食べて、毎日、すっきりお通じがあるようにしよう。
また、腸内に住み着く善玉菌には、食物の消化吸収を助け便通をよくするはたらきがある。善玉菌の代表は乳酸菌のひとつ、ビフィズス菌。牛乳やヨーグルトなどに含まれる乳糖や、大豆・たまねぎなどに含まれるオリゴ糖にはビフィズス菌を増やすはたらきがあるので、便秘がちの人にはおすすめ。
一方、下痢も痔の原因のひとつ。特に便秘と下痢を繰り返すことで肛門に大変な負担がかかってしまう。快便を目指すには暴飲暴食をやめ、バランスのとれた食生活を送ることが大切だ。特に食物繊維は下痢の改善効果も期待できるので、積極的に摂ろう。
唐辛子やこしょうなどの香辛料は消化されずにそのまま排泄され、排便の際に肛門の粘膜を刺激し、キレ痔やイボ痔の原因になったり悪化させたりすることもある。香辛料はほどほどに。またアルコール類を摂り過ぎると、肛門のクッション部にある静脈などの細い血管が拡張してそのままうっ血につながる場合があるので、過度の飲酒は禁物。
運動不足も便秘のモト。腸の運動や排便を促す筋肉が弱り、便が出にくくなってしまうのだ。ウォーキングやストレッチなど、手軽にできるものを毎日の生活に取り入れたい。
また長時間のデスクワークや座りっぱなし、立ちっぱなしの姿勢でいるときは時々軽く体操をするなどして足腰の血行を促すようにしよう。
トイレで座っている姿勢がお尻の血行を悪くし肛門に負担をかけてしまい、イボ痔を作ったり悪化させることも。1回の排便時間はなるべく短く、3分以内にすませられれば理想的。
どうしても長く頑張らないと排便できないという人は、朝起きてコップ1杯の水や野菜ジュースを飲んだり、お腹のツボやマッサージをしたりして、自分なりにうまく「出す」コツを見つけては?
また、便座が冷たかったりするとお尻を冷やす原因に。寒い時期は暖房便座やカバーなどで冷えない工夫を。お尻丸出しで新聞や本を読むのもやめよう。
冷えは痔の大敵。ゆっくりと湯船につかることで肛門周りの血行がよくなり、痔の予防や改善に。また、使い捨てカイロや暖かい下着などを利用して、くれぐれも体を冷やさないようにしよう。