女性の更年期をどう過ごし、更年期障害をできるだけラクに乗り切るにはどうしたら良いのでしょうか。食生活や運動のポイントを踏まえて、更年期の対処法をご紹介します。
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一般的に、45~55歳の10年間を「更年期」と呼ぶと紹介しましたが、この10年の間中、さまざまな不快症状に見舞われるわけではありません。
短い人で約1年、長い人でも約5年で症状は軽減するといわれています。確かに簡単に乗り切れる長さではありませんが、救いは必ず終わりがあるということです。更年期、そして更年期にまつわる不定愁訴はきっとおさまります。
次に挙げる10ヵ条は、更年期不定愁訴症候群の治療の先駆者である野末悦子医師が提唱したものです。
いかがでしょうか。少しは元気な気分になれたでしょうか。ただ、急に「生き甲斐を持て」とか「いいカッコをするな」と言われても困る、とまどうといった人もいるでしょう。たとえ趣味ひとつでも、いきなり言われて「はい、そうですか」と、今日から趣味が持てるわけではありません。
そんなときは、気持ちのままに楽しんでみる、といった意識づくりからはじめるのはどうでしょうか。例えば、雑誌を見ているうちにガーデニングをしてみたいと感じたら、まずやってみます。昨日と今日で興味の対象がガラリと変わってしまってもいいでしょう。気持ちのままに、好奇心の動くままに。そうして、そのときそのときの楽しいことにトライしながら「QOL=人生の質」を向上させていきましょう。明るく、前向きに。きっと更年期ばかりでなく、その後へと続く長い楽しい時間が醸成されていくはずです。
ただ、ここでも注意が必要ですが、上記のようなことを言ったからといって更年期の不定愁訴を、精神論や気持ちの問題と片づけてしまってはいけません。気持ちも不定愁訴を軽減、あるいは改善する要素のなかのひとつ、と捉えることを肝に銘じておきましょう。
女性ホルモンのところでも取り上げましたが、更年期に劇的に減少するエストロゲンは、卵巣機能のはたらきのほかにも、重要なはたらきを担っています。
代表的なのが、コレステロールを抑制する、骨粗鬆症を抑えるといったはたらきです。つまり、エストロゲンが減少するということは、これらのはたらきを食生活などでカバーする必要が出てくるということなのです。具体的に、どんなことを心がければ良いかというと…
また、更年期ならではの不快な症状は、表のような栄養素を十分に摂る食事で改善していきましょう。
症状 | 多く摂りたい栄養素 | はたらきと効果 |
---|---|---|
肩こり、腰痛、冷えなどには | ビタミンE | ビタミンEは、血液の循環を促すのに効果的です。 |
だるい、疲れやすいなどには | ビタミンB1 | ビタミンB1が不足すると、エネルギー代謝がスムーズに行われなくなり、疲れやすくなります。また、憂鬱になったり、落ち着かない気持ちになることも。 |
貧血による動悸や息切れには | 鉄分 | 更年期には月経量の増加などから貧血になることもあります。鉄分は十分に補給をしましょう。 |
肌荒れ、かさつきには | ビタミンA | 不足すると肌のトラブルに。ビタミンEと一緒に摂ると、いっそう効果的です。 |
便秘には | 冷水と、食物繊維 | 腸のはたらきが弱まって起こる便秘に効果があります。 |
眠れないときは | トリプトファン | アミノ酸の一種で、安眠を誘う物質とされるもの。バナナや牛乳、あんず、プルーン、木の実などで摂るのがおすすめです。 |
軽いウォーキングなどの運動は、骨へのカルシウムの吸着率を促進する、血中コレステロールを減らすなど、有意義な効果がいろいろあります。また、精神的なストレスや疲れには、汗を流す運動がとても良い解消法になります。ぜひ習慣にしていきましょう。
また、気持ちが落ち込む、なんとなく落ち着かないといったときは、アロマテラピーを試したり、ハーブティーを飲んでみたり。好きな音楽を聴いているだけでも違ってくるものです。こうした自分なりの気持ちへの対処法も少しずつ身につけていきましょう。
女性が、いわゆる更年期障害だと感じるきっかけは実にさまざまです。強いていえば生理不順や不正出血ですが、なかには「だるくて何もする気になれない」といった状況を家族が見かねて病院を受診させるケースもあるようです。治療面では、症状により個人により、ホルモン療法が良い場合もあればカウンセリングが功を奏する場合もあります。また、そうした更年期障害に似た症状のカゲで、命に関わる病気が進行していることもあります。
更年期にあたる年齢になったら、年に一度は健康診断を受けましょう。そして、どんな症状も我慢や無理は禁物です。更年期においては、「困ったときの医者頼み」ではなく、「何かあったら医者が先」。つまり心得は「先手必勝」が絶対です。大きな病気がなければ安心できますし、何より出てきた症状を緩和・軽減する方法を医師とともに進めていけるのです。ぜひ今から、相性の良い医師や病院を意識的に探しておき、体調に違和感を感じたらすぐ医師に相談しましょう。
参考文献:「明るく乗りきる男と女の更年期」赤塚祝子 講談社現代新書
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