疾患・特集

レビー小体型認知症の症状別の対処方法(1)

レビー小体型認知症の患者さんと一緒に暮らす家族は、毎日のように繰り返される症状にどう対処していいのか悩むもの。まずは、よくある症状の中でも、特に代表的なものへの対処方法を知っておこう。

監修:メディカルケアコート・クリニック院長 小阪憲司 先生 (横浜市立大学名誉教授)

CASE 1:幻視

症状:
レビー小体型認知症の代表的な症状で、そこにいないはずの子どもや虫、黒い服を着た人などが見える。実際にはいないことを言い聞かせても、本人にはたしかに見えているので、まわりの人が何を言っても耳を貸そうとしないことが多い。むやみに強く否定すると、不信感をきたしたり、症状の悪化や妄想への移行を招きかねない。

対処方法:
幻視への適切な対処方法は、患者さんの状態によって異なる。見知らぬ人や虫などが見えることで、怖がっている、あるいは興奮している場合には、否定はせずに十分に話を聞いてあげるようにしよう。ときには、見えているという場所に行って触ったり、追い払ったり、やっつけたりする演技をすることで安心させられることもある。電気をつけて明るくするのも良い。また、人形や掛物、壁の汚れなどを見間違えることもあるので、それらを取り除くことも有効だといえる。
特に怖がる様子がない場合は、否定をして、実際にはいないことを正直に話してあげても良い。繰り返し話せば、自分にしか見えない幻視であることを、患者さんが認められるようになることがある。ただし、この場合も一方的に否定するのではなく、十分に話を聞くようにしたい。なお、薬物療法が必要なことも少なくない。

CASE 2:妄想

症状:
レビー小体型認知症による妄想は、幻視に伴って起きることが多い。実際にはいない子どもが見え、その子供に自分の大切な物を持っていかれるという被害妄想がこれにあたる。また、「夫が浮気している」など、嫉妬妄想が現れることもよくある。妄想によって抑うつ症状が進行したり、興奮して家族に暴力的な言動をとったりすることもある。

対処方法:
幻視に伴って起こっている妄想は、まず幻視をなくすことが大切であり、妄想の原因を取り除いてあげることで対処できることもある。
患者さんは妄想を信じこんでいるので、強い否定や説得はうまくいかない。有効なのは、妄想に登場する夫または妻などが、患者さんを世話したいという気持ちを抑えて、できるだけ近づきすぎないようにすること。ケアマネージャーなどの第三者が関わるようになってから、妄想が軽減されたという例があるので、ある程度の距離を保つことは有効だといえるだろう。妄想には薬物療法が必要なことも多い。

CASE 3:レム睡眠行動障害

症状:
浅い眠りについているレム睡眠の状態で、怒鳴り声のような大きな寝言を言うことや、奇声を発することがある。また、布団の上で手足をばたばたさせていることも少なくない。悪夢を見ていることがほとんどで、夢遊病のように眠りながら歩き回ることは少ない。また、せん妄と異なり、この症状が現れているときに起こすと、通常は本人が悪夢の内容を覚えている。

対処方法:
夜間は10分以内に治まることがほとんどなので、ベッドから落ちる、一緒に寝ている人をたたくなどの危険なことがなければ、そっとしておいても良いだろう。
問題は、レム睡眠が長くなる朝方。10分では治まらないような場合は、起こしても良い。ただし、起こし方には気をつける必要がある。むやみに体をゆすって起こすと、見ていた悪夢と現実を混同して、混乱や興奮を引き起こすことになりかねない。そこで、部屋の電気をつける、懐中電灯で顔を照らすなど、自然に目が覚めるようにすることが望ましい。目覚まし時計などで音を鳴らして目覚めさせるのも、良い手段のひとつだといえる。