春の訪れとともに、花粉症の原因のひとつ、スギ花粉もやってきた。
環境省では、2009年春に飛散するスギ・ヒノキ科の花粉の総飛散量は例年並みや多めな程度と予測している。しかし、花粉の飛散量は年々増えており、今日での「例年並み」は10年前のそれと比較して1.7倍にもなっている。
花粉症の患者の割合も、1998年の16.2%が2008年には26.5%と10年のうちに著しく増加している。(馬場廣太郎: Prog.Med 28: 2001~2012, 2008)
スギ花粉症でつらいのは、なんといっても目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状。
さらに、症状があるために外出するのがおっくう、仕事や家事が手に付かない、勉強やスポーツに集中できないなど、普段の生活と比較してパフォーマンスが下がってしまうことだ。
ただ、症状によるパフォーマンスの低下は、適切な治療を受ければ改善される。
近年、「花粉症のつらさから開放されたい!」と花粉症の薬を服用している人も多くなったが、薬が脳に移行すると『インペアード・パフォーマンス』が起こりうることをご存知だろうか。
インペアード・パフォーマンスとは、抗ヒスタミン薬という花粉症の薬で、引き起こされることがある『気づきにくい能力ダウン』のこと。
具体的には、ミスが増える、仕事や授業の集中力が下がる、作業能率が低下するといった状態だ。眠気と違って薬が原因で起きていることを自覚しにくいことが特徴で、見過ごされてしまうことも多い。
抗ヒスタミン薬は、体内に吸収されると、ヒスタミンという物質のはたらきをおさえ、花粉症の症状や皮膚のかゆみを鎮めてくれる。
しかし、薬の成分が脳に移行すると、脳内のヒスタミン受容体に作用し、日中の眠気を防ぐヒスタミンのはたらきまでおさえてしまうため、集中力や判断力が低下してしまうのだ。これが、インペアード・パフォーマンスと呼ばれている。
体内のアレルギー症状が起きている部位に作用し、脳に移行しにくい薬を選ぶことが花粉症治療時のパフォーマンスを維持する重要なポイントだ。
花粉症の薬を処方してもらうとき、眠気の強い薬の方が、効きめがあると思うのは間違い。眠気は、薬が脳に到達することで現れるが、花粉症の症状は、薬が鼻などの組織にはたらきかけてやわらげるからだ。最近では、眠気が少なく効きめの良い薬も増えている。