疾患・特集

メタボ改善には、まず「敵」を知ることから

メタボの本当の意味と怖さって?

講師:板倉弘重先生
講師:板倉弘重先生

メタボリック・シンドローム――。 その言葉はよく耳にするし、実際、気にもなっている。でも、そもそもどんな病気なの? そんな方のために、第1部ではまず、易しくメタボを解説することからスタート。
テレビでもおなじみ、栄養・代謝がご専門の板倉弘重先生が、メタボリック・シンドロームの本当の意味、恐ろしさを教えてくれた。

メタボリック・シンドロームの意味とは?

皆さんは、「メタボリック症候群」イコール「太っている人」「ウエストが太い人」「ビール腹の人」と思っていないだろうか? 残念。実はそれはどれも正しくない。
そもそも、メタボリックとは日本語で「代謝」、シンドロームとは「症候群」。「メタボリック・シンドロームとは、内臓脂肪が増えることで血液中の糖や脂肪を分解するはたらきが正常に行われず、肥満、高血圧、高脂血症、高血糖といった様々な症状が重なって出現する病気なのです」と板倉先生。

内臓脂肪に含まれる脂肪細胞が分泌する悪玉ホルモンが、血圧を上げる、血糖値を上げる、血液をドロドロにするなど、全身で様々な悪さをはたらき、それによって様々な症状が引き起こされるという。

メタボリック・シンドロームの診断基準とは?

メタボリック・シンドロームの診断基準はこの通り。
よく、メタボ=おなかがポッコリのイメージをもたれるが、単純にウエストが太いかどうかが大事なのではなく、そこから内臓脂肪の蓄積量をチェックすることができるためにウエストが重視されている。

どうしてメタボは危険性と言われるのだろう。
それは、1つ1つの症状が軽くても重なって起こることで、脳血管障害や心疾患など命に関わる大きな病気の発生率が格段に高くなるといわれているから。

「肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪のうち危険因子が3つ以上重なると、心筋梗塞の発症危険度が36倍以上になることが分かっています」(板倉先生)

メタボリック・シンドロームが怖い本当の理由

打つ手はあるの?

メタボリック・シンドロームに該当する人は約960万人。 予備群をあわせると、約1940万人にのぼると推定されている。

男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリック・シンドロームを強く疑われる、または予備群と考えられています」と板倉先生。

防ぐ手立てはまず、日々の生活習慣を見直すこと。特に、運動と食事の2点が大事であると強調された。
ただし、やせすぎの妊婦や妊娠中のダイエットなどにより胎児への栄養が不十分だと、生まれた子どもはメタボになりやすいといわれている。

メタボは遺伝する!?

講演後の板倉先生への質問タイムでは、こんな気になる質問が寄せられた。

メタボは遺伝する!?「遺伝的要素以上に環境的な要因のほうが大きいといわれています」

「確かに、メタボリック・シンドロームになりやすい体質というのはありますし、以前は遺伝が大きくかかわっているといわれていました。ただ、最近の研究では、遺伝的要素以上に環境的な要因のほうが大きいといわれています」と板倉先生。
例えば同じ遺伝子を持つ双子でも、どういう生活を送るかで、糖尿病になる、ならないに差が現れる場合もあるという。
「過剰に塩分を摂取しない、適度な運動をするなど、自分で守れることをやっていくことで『なりやすい体質』という負の遺産もカバーできると言えます」