疾患・特集

尿もれの悩みは、専門家が解決!

不安は捨てて、医師に相談を!

尿もれだとわかっても、「人に相談するのは恥ずかしい」「病院へ行くのは面倒」などと診察を躊躇する人は多いだろう。
しかし、これはとても間違った考えだ。尿もれは病気であり、治療すれば治るのである。 かかりつけ医がいるならば、恥ずかしがらずにその医師に相談してみよう。症状に応じて適切な専門医を紹介してくれるはずだ。妊娠中や産後間もない人であれば、通院中の産婦人科で相談してみるのもよい。

最近では、女性の尿もれを専門的に診察・治療する医療機関が増えてきている。
ウロギネ外来」という言葉をご存知だろうか?ウロは泌尿器科(Urologie)、ギネは婦人科(Gynecologie)、ウロギネ(Uro-Gyne)はその合成語だ。欧米では女性の尿もれを専門的にみる診療科として、内科や外科などと同様にひとつの診療科としてあつかわれている。わが国においても最近、ウロギネ外来を開設した医療機関があり、いずれ身近な診療科となるかもしれない。

また「泌尿器科は男性患者が多くて行きづらい」という女性の不安をくみとり、女性専門の泌尿器外来も多く登場している。多くは医師も女性であるなど、女性が気軽に相談でき、安心して診察を受けられるように配慮されている。

専門家からのメッセージ

「日本コンチネンス協会」という民間団体は、電話による尿失禁の無料相談を行っている。医療機関ではないため、診断を行ったり具体的な診察や治療法については答えられないが、医師の診察を受ける前にアドバイスが欲しい、話だけでも聞いて欲しいという人などは、一度電話をしてみてはいかがだろうか。

代表をつとめる西村かおる先生に、尿もれ相談の現状などについてうかがった(以下は、先生のお話をもとにまとめたものである)。

Q. 電話相談はどれくらいの件数を受けられていますか?

1日平均4~5件、多い日で10件。2004年度は1年間で739件の電話相談がありました。より多くのご相談を受けるためにも、相談員の充実が望まれるところです。

Q. どんなご相談が多いですか?

8割はご本人ですが、介護をされている方やご家族からの相談もあります。内容としては症状やケアに関するもののほか、つらい思いを打ち明けられるような内容が多くあります。

Q. 尿もれは精神的にもつらい思いをする人が多いのですね。

先日は、40歳の女性からこんなお電話がありました。10年前に出産を経験してから軽い尿もれがあったものの、さほど気にしていなかったそうです。ところがお子さんの運動会で母親競技に参加中、急にトイレをガマンができなくなり、グラウンドにしゃがみこんだとたんもれてしまった。周りのお母さん方に驚かれただけでなく、お子さんから「もう学校に来ないで」といわれ、非常にショックを受けたご様子でした。このような出来事をきっかけに外出ができなくなり、家に閉じこもる方が増えています。

Q. そのように悩んでいる方は、どうすればよいのでしょうか?

何よりも治そうという気持ちを持っていただくことが大切です。日本コンチネンス協会では、ご相談いただいた内容に対してさまざまな対応策を一緒に考えて、問題整理をしていきます。骨盤底筋体操など、自分でできることもたくさんあります。またご家族や介護者の方も問題をかかえこまず、ぜひ専門家にご相談されることをおすすめします。大切なのは、あきらめないという気持ちです。

西村かおる先生 プロフィール

西村かおる先生

日本コンチネンス協会会長。英国に留学し失禁看護を学び、帰国後、コンチネンスセンター(排泄ケア情報センター)を開設。排泄障害の要望と治療の啓蒙活動を展開。現在、北里大学病院泌尿器科、東京都リハビリテーション病院泌尿器科失禁外来等勤務。

診察にむけて心の準備!どんなことを聞かれるの?

尿もれで医療機関を受診すると最初に、医師と患者でじっくり話をする問診が行われる。それによってどのタイプの尿もれかも診断できる。問診ではたいてい、以下のようなことを聞かれる。あらかじめ回答を考え、メモを持参しておくと良い。不安な気持ちがやわらぎ、スムースに問診が運ぶだろう。

質問項目

  • 年齢
  • 身長、体重
  • 排尿回数
  • いつから尿もれがあるか?
  • どういうときに尿がもれるか
  • 1日に何回くらい尿がもれるか
  • どれくらいぬれるか
  • 尿もれのためにパッドを使用しているか
  • 月経はあるか
  • 出産回数
  • 既往歴(これまでにかかった病気)
  • いままでに受けた手術
  • 現在飲んでいる薬

問診のほかに、症状に応じて検査も行われる。少し抵抗を感じるかもしれないが、尿もれは人によって症状が異なるため、もっとも適した治療を受けるためには詳しい検査が必要だ。

  • ●内診
    婦人科の診察とほぼ同じ。医師が膣内に指を入れて、骨盤底筋の力や膀胱・子宮などの位置、尿もれによる皮膚の湿疹がないかなどを調べる。
  • ●ストレステスト
    膀胱に尿がたまった状態でくしゃみや咳などをして、尿がもれるかどうかを調べる。
  • ●尿失禁定量テスト
    尿もれの程度をしらべる方法。水500mlを飲んだあと、パッドをあて、階段の上り下りなどお腹に力が入り尿もれをしやすい動作を行い、そのパッドの重さをはかって、もれた尿の量を調べる。
  • ●エコー(超音波検査)
    膀胱や尿道の状態、残尿の有無を調べる。

また、診察をよりスムーズに進めるために、毎日の排尿の状況を記入した「排尿日誌」を持参するのもおすすめ。最初の診察のときに、医師がより正確に排尿状態を把握できるし、診断、治療計画を立てるのにとても役立つ。日誌といっても特に決まった形はない。用紙は手元にあるノートでも何でも良く、そこに「排尿した時刻」「1回の排尿量」「1日の排尿量」「飲み物(水分)を摂った時刻とその量」「尿失禁があったか無かったか」を記入しよう。排尿量をはかるには目盛りのついたコップを使うと正確だが、なければ市販の紙コップを使っておおよその量をはかることもできる。

尿もれQ&A

Q. まだ30代前半ですが、2年前に出産してから、重い荷物をもつときなどに軽く尿がもれるようになりました。といっても下着が軽くぬれる程度で大した量ではありません。これもいわゆる尿もれでしょうか?

A. 出産は尿もれ、とくに腹圧性尿失禁とおおいに関係があります。出産によって骨盤底筋が伸びて弱くなってしまうためで、同じ30代、40代の女性でも出産経験者と出産未経験者とを比べると腹圧性尿失禁は出産経験者(しかも3回以上)に圧倒的に多いようです。若いから、体力があるからというのと尿もれとは別の問題ととらえた方が良さそうです。