クシャミや咳をしたとき、笑ったときに思わず下着をぬらしてしまった…。
こんな経験はないだろうか?尿もれのことを医学用語で「尿失禁」と言うが、健康な成人女性でも25~30%が経験している。つまり4人に1人が経験者という、女性にとって実に身近な問題なのだ。
ではなぜ女性に尿もれが多いのだろうか?それは、男性と女性の体のしくみの違いにある。男性の尿道は約20センチと長く、カーブしていて、まわりが組織でしっかりと固定されている。一方、女性の尿道は3~4センチと短く、膀胱からストンと下がっているだけなので非常に不安定。さらに尿道や膀胱を正しい位置に支える骨盤底筋が男性にくらべて弱いため、クシャミなどでお腹に力が入ると尿がもれやすくなる。つまり女性は男性にくらべ、体のしくみの違いから尿もれしやすいわけだ。
ひとくちに尿もれといってもいろんなタイプがあるが、代表的なものに「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」がある。
くしゃみや咳、大笑い、重い荷物をヨイショと持ちあげた瞬間など、急にお腹に力がかかったときに尿がもれてしまうタイプを「腹圧性尿失禁」という。これは骨盤底筋がゆるんでしまっているために膀胱が下がり、尿道を締める力が弱いのが原因。出産を経験した女性に多くみられる。
一方、切迫性尿失禁は、冷たい水道水に触れた刺激や寒さなどがきっかけで膀胱が勝手に収縮してしまい、尿意をもよおしてトイレにかけこむものの、間にあわないというタイプ。ふつうよりも少ない尿量で尿意を感じてしまうので、切迫性尿失禁の人の多くは頻尿になってしまう。
さらに、腹圧性と切迫性尿失禁両方の要素をあわせもった症状の人もいる。
どのようなタイプでも日常生活のちょっとした動作が引き金となって尿がもれるため、非常にやっかいなことになる。
腹圧性尿失禁の場合、症状が軽いうちはゆるんだ骨盤底筋を鍛える体操を行うことで、尿もれはかなり改善される。体操だけでは症状が改善されない場合は、薬をもちいて治療をする。
歩いているだけで尿がもれるなど症状が重い場合や、体操や薬の服用を数ヵ月続けても効果のみられない場合には、手術という方法もある。手術といっても最近では体に負担の少ない方法が多く開発されているので、怖がる必要はない。
一方、切迫性尿失禁の人は膀胱が勝手に収縮しやすい傾向があるので、膀胱の収縮を抑制するはたらきのある薬を使うと、症状が改善しやすいとされている。切迫性尿失禁の場合にはまず、薬による治療が適切と考えられるので、医師の診察を受けるのがおすすめだ。
このように、タイプによっても治療法が異なってくるため、まずは自分がどのタイプの尿もれかを見きわめることが大切。以前から尿もれが気になっていた人も、「最近、ちょっとした動きで下着が少しぬれるけど、これも尿もれ?」などと思いあたるフシのある人も、ぜひチェックしてみよう。
症状 | 腹圧性尿失禁 | 切迫性尿失禁 |
---|---|---|
咳やくしゃみでもれる | ||
重いものを持ち上げたときにもれる | ||
夜寝ているときにももれることがある | ||
笑ったときにもれる | ||
階段の昇り降りでもれる | ||
トイレに間にあわない | ||
冷たい水で手を洗うとトイレに行きたくなる | ||
歩いているだけでもれる | ||
脳梗塞、パーキンソン病などと診断されたことがある | ||
花粉症の時期によくもれる |
※圧倒的に多いのは「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」だが、他にもいろんなタイプの尿もれがある。このチェックシートだけでは確実に判定できないため、あくまでも参考としてして利用して欲しい。
Q. トイレの回数が多く、トイレにかけこんだものの下着を下ろすまでに間に合わず、もれてしまうことがたまにあります。これは尿もれでしょうか?
A. 普通、膀胱に150~200ccの尿がたまると「トイレに行きたい」と感じます。これが「尿意」。通常は尿意を感じても1~2時間はガマンできるため、膀胱には300~500ccの尿をためることができます。1日4~8回、3~4時間の間隔でトイレに行くのが通常ですが、これよりも回数が多くなり、しかも「間に合わない」と思うような切迫感をともなって尿がもれるようであれば、頻尿と、切迫性尿失禁がうたがわれます。
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