疾患・特集

メディカルケアで花粉症を乗り切る

花粉症治療の中心は薬物療法

仕事や家事に追われ、なかなか病院に行く時間が取れないが、鼻水や鼻づまり、目のかゆみなどの不快な花粉症の症状に悩まされているなら、ぜひ一度、専門医の診察・治療を受けたいもの。現在、花粉症治療の中心は薬物療法だ。

飲み薬

代表的なものに、抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬がある。それぞれ種類がいくつもあるので、ひとつの薬で効かなくても諦めず、自分の症状に合うものを探していこう。

1抗アレルギー薬

抗アレルギー薬

ヒスタミンやロイコトリエンといった、鼻の粘膜を刺激する物質の放出を抑える作用がある。アレルギー症状の予防として、花粉飛散の2~3週間前に飲む。飛散開始直後に飲んでも、OK。

2抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬

もっとも即効性のある薬で、ヒスタミンが三叉神経に与える刺激を弱める作用がある。これまでは眠くなりやすいのが難点だったが、最近では眠気の少ない抗ヒスタミン薬も開発されている。

3セレスタミン

抗ヒスタミン薬とステロイド薬(副腎皮質ホルモン)が配合された薬で、大変よく効く。その効き目から、つい連用したくなるが、ステロイドが入っているため、2週間以上の連用にはくれぐれも注意。主治医の指示を守ること。

点鼻薬

症状のある場所に少量で効くので、飲み薬とともにうまく利用しよう。抗アレルギー薬の点鼻薬で効かないときは、ステロイド薬のものを。さらに重症の場合には血管収縮薬(粘膜の血管を収縮させて腫れを取り除く薬)を前もって利用し、抗アレルギー薬やステロイド薬を用いるとよく効く。上手な使い方は、左右の鼻に点鼻後、すぐに上を向くこと。こうすれば鼻の粘膜に沿って薬が置くまで届く。鼻水が増えるときには、ドライパウダータイプを使うことも。

そのほかの治療法

1特異的免疫療法(抗原特異的減感作療法)

スギ花粉のエキスを薄めて注射し、アレルギー反応が起きないように体を慣らしていく方法。注射を週に1回からはじめ、徐々に、2週に1回と間隔をあけ、量を増やし濃度を上げていく。効果が出るまでに3ヵ月ほどかかり、その効果を維持するには治療を2、3年続ける必要があるが、長期にわたって花粉症の症状を落ち着かせ、安定した状態にすることができる治療法である。副作用として、注射を打った部位の腫れや皮膚が赤くなることが報告されているが、注射後15分以内に起こるので、病院で適切な処置をすれば治すことができる。
(参考文献:鼻アレルギー診療ガイドライン2009年版)

2レーザー療法

鼻の粘膜の表面をレーザーで焼く方法。花粉症のほか、ハウスダストなどによるアレルギー性鼻炎にも使う。ただし、半年ほどで粘膜が再生するので、症状も再発することはよく覚えておこう。飲み薬や点鼻薬の併用も必要。

花粉症の薬にまつわるギモンを解消しよう

「眠くなるのは仕方がないの?」「常用するのが不安」など、花粉症の薬にまつわる素朴な疑問を専門医にたずねてみた。

Q 病院では内服薬、点鼻薬、点眼薬など、いくつかの薬を処方されます。みんな同時に使っても大丈夫なの?

心配があれば、医師、薬剤師にご相談を。
専門のクリニックでは、内服薬と点鼻薬、点眼薬を併用することはごく普通の治療方法です。これにより副作用が出たりすることはないのですが、心配な点があれば医師や薬剤師と相談してください。

Q 花粉症の治療薬は、「眠くなる」とか「口が乾く」とかいう噂を聞きました。何か強い薬なのでしょうか?

眠くなるからそれだけ強いというわけではありません。
花粉症で一番よく用いられる薬は、「抗ヒスタミン薬」というお薬です。古くから使われていた第1世代の抗ヒスタミン薬のほとんどが眠気を催しますが、比較的近年開発された第2世代の抗ヒスタミン薬の中には以前のものとは比較にならないくらい、眠気が少ないものもあります。ですから眠くなるからそれだけ強いというわけではありません。
薬理学的に言うと抗ヒスタミン薬というのは、作用も単純で、眠い以外には副作用はあまり認められません。ですからステロイド薬などとはかなり異なる薬と考えてよいでしょう。

Q 薬を飲めば鼻の症状はおさまるけれど、顔の皮膚や口の中、目のかゆみは治まりません。これは薬が合わないため?何かいい対策はありませんか?

医師と相談の上、いくつかの薬を併用してみては?
抗ヒスタミン薬はステロイド薬ではないので、効果はある程度限定されたものといえます。鼻の症状は治まってもそれ以外の症状がとれない場合には、別のお薬を併用することを考えた方がよいでしょう。例えば目のかゆみには抗アレルギー薬の目薬、それ以外の症状には別のタイプの抗ヒスタミン薬を使うといった方法です。
しかしながら内服薬の併用については薬の性質をよく知った医師と相談した上で行うべきでしょう。どんなお薬もそうですが、たくさん飲めばそれだけ効くわけではありませんし、予期しない副作用が出ることもあるので、素人判断は禁物といえます。

Q 花粉症で、どんな症状が出たらお医者さんに行ったほうがいいのでしょう?

市販薬を飲んで、かえって眠くなる、鼻や目が乾くといった症状がみられたら、専門医へ。
晴れて暖かく、ソヨソヨ風が吹いている日に、突然目や鼻がかゆくなる、風邪もひいていないのに鼻がつまる、くしゃみが出るなどの症状がある場合には、花粉症を疑うべきでしょう。時間がなければ町の薬局で症状を説明し、花粉症の薬をもらうとよいでしょう。それらの中には上に述べたような抗ヒスタミン薬や、血管を収縮させる薬などが入っています。これで症状がおさまれば、しめたものです。かえって眠くなったり、症状治まるが鼻や目がカラカラになってしまうなどの問題が起きた場合には、その時点でアレルギー科や、耳鼻科、または花粉症の治療によく慣れた内科のクリニックへ相談に行くとよいでしょう。

Q 「一回で効く注射」って、どんなもの?
注射は年々効かなくなると聞いたのですが、本当ですか?

ケナコルト注射にご注意を。ステロイドホルモンを使った注射で、副作用が多く、おすすめできません。
「一度の注射で3~4週間効果が持続し、鼻炎・結膜炎・喘息症状が全く無くなってしまう」という注射があると、聞いたことはありませんか?これは「ケナコルト注射」といい、ステロイドホルモンを使った注射です。免疫力の低下、注射部位がへこむ、気分のムラ、特に女性の場合は生理不順や骨粗しょう症など、深刻な副作用が起こる場合がよくあるので、アレルギー専門医では行っていません。決しておすすめできない方法です。
現時点で花粉症治療に使う注射は、減感作療法で用いるものが一般的です。減感作は続けていても効かなくなるということはありません。一方ケナコルトについてですが、私たちは一度も使ったことがないので、効かなくなるかどうか、お答えできません(残念ながら!)。