年々増える糖尿病人口。糖尿病の一番怖い点はどこにあるのでしょうか?糖尿病の進行を遅らせたり、予防したりするためには、食事の改善が不可欠です。効果的な食事療法について簡単におこなうポイントを紹介します。
年々増える糖尿病人口。予備軍も含めると、今や60歳以上の男性では3人にひとり、女性では4人にひとりという時代です。では、糖尿病の一番怖い点はどこにあるのでしょうか。糖尿病に詳しい、菅原医院の菅原正弘院長に伺いました。
先生:「恐ろしいのは合併症。きちんと管理しないと、動脈硬化や網膜症、腎症、神経障害などが進展します。糖尿病による網膜症で視力を失う人は年間4000人。腎症で人工透析を受けている人は、新規導入者の4割、全透析人口の2割を占めます。糖尿病による腎症は、他の疾患より透析移行後の予後が悪いのが特徴です」
糖尿病のもうひとつの特徴は、初期症状がほとんどないことです。それだけに病気を抱えながら無自覚な人が多いことが問題となっていあmす。
先生:「日本人の場合、小肥り程度の人でも糖尿病にかかりやすいんです。これは、ブドウ糖を分解するインスリンの分泌能力が欧米人に比べて低いうえ、食べたものが脂肪としてたまりやすいため。さらに日本人の40パーセントが、太るとインスリンが効きにくくなる体質を持っています」
最近は成人ばかりか子どもの糖尿病も少なくない、と菅原先生。
背景にあるのは、高脂肪の食事や甘い飲食物の摂取の増加。肉食や外食があたりまえになり、運動量のわりに過剰なエネルギーを抱えこむ人が増えていること。だからこそ、糖尿病の進行を遅らせたり、予防したりするためには、食事の改善が不可欠です。効果的な食事療法を簡単におこなうポイントを菅原医院の冨重慶子管理栄養士に伺いました。
あまり厳格に考える必要はありません。コツさえわかれば、誰でも簡単にできます。最適なカロリーを守り、まんべんなく栄養を摂りましょう。日本糖尿病学会が発表している食品交換表を参考にするとよいでしょう。食品が表1~6に分類されており、それぞれの摂取単位を決めて、食事に取り入れるようになっています。一見難しそうですが、コツは次の3つです。
この3点をおさえれば、あとはおかずの摂取量を決めるだけです。また、医師から指示された、1日分の摂取エネルギーを超えないよう気をつけてください。
塩分はなるべく控えめに。糖尿病の人は動脈硬化が進みやすく、血圧管理も重要な課題となります。腎症予防のうえでも塩辛い味つけは避けたいものです。また、動物性脂肪はカロリーも高く、インスリンの作用を弱めるので、摂り過ぎに注意しましょう。
糖尿病の改善に効果があるとされているのが、食物繊維です。糖分が体内に吸収されるスピードを遅くし、血糖値の急激な上昇を防いでくれます。また、血中コレステロール量を下げるはたらきもあり、心臓疾患などの合併症の予防が期待できます。低カロリーでお腹も膨れ、肥満解消にも役立ちます。食物繊維を多く含む食品は、野菜、海草、きのこ類など。
大切なのは続けることです。楽な気持ちでやりましょう。「甘いものも絶対に我慢」ではありません。好きなだけというわけにはいきませんが、どうしても欲しいときは、カロリーゼロ甘味料をコーヒーに入れるなど、工夫しながらおこなってください。
食事のコツはほかにもいろいろ。すべてを実行するのは難しいと思いますが、まずはできるところからやってみましょう。