生物は酸素を利用しているが、酸素を利用する限り活性酸素の害もなくならないのが現実。それでも酸素を必要とするのは酸素が高エネルギーだから。さらに人類は活性酸素に対抗する「スカベンジャー」も手に入れたのだ。
人間を含め、地上に生きるおおよそすべての生きものは、酸素をエネルギー源として利用し、生命をつないでいる。そもそもなぜ、酸素を取り入れたのだろう?なぜなら、酸素が生物の代謝を高めるのにとても有効なエネルギー源だからだ。
代謝は生物にとって基本的な生体活動。例えば、ご飯の糖分をブドウ糖に、ブドウ糖をグリコーゲンや脂肪に、肉や魚のたんぱく質をアミノ酸にするなど、食物から摂り入れた栄養を体の中で使える形にするといった、まさに生命維持に欠かせないはたらきをする。この代謝に必要なのが酸素。そのエネルギーは、酸素のない無酸素状態のときに比べて、16倍高いともいわれている。しかし、残念ながらこの代謝の過程で生まれるのが、活性酸素なのだ。
酸素を吸うたびに発生する活性酸素は、老化や病気にも大きく関係している。活性酸素が体の細胞に入り込むと、たんぱく質、脂質が酸化し、細胞のはたらきが低下する。それどころか、DNAの情報が書き換えられ、性質が変わり、増殖するなど、さまざまな悪影響を及ぼすこともあるのだ。
もちろん、私たちの体はだまって活性酸素の攻撃に耐えているわけではない。人類は酸素から発生する有害な活性酸素を中和する術も同時に手に入れたのだ。それが、「スカベンジャー」という抗酸化物質。人類はその体内にスカベンジャーを派遣して活性酸素の発生を予防したり、ダメージを受けた部位を修復したりと、酸化の被害から身を守っているのだ。
代表的な活性酸素には、スーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素といった種類があり、それぞれ対抗するスカベンジャーも異なる。
スカベンジャーには、体内でつくられるSOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼといった酵素、また体外から取り入れるビタミン、ファイトケミカルなどの抗酸化物質がある。
細胞のミトコンドリアで作られ、体中に大量に発生する活性酸素。
対抗する代表的なスカベンジャー:SOD、ビタミンC
スーパーオキシドラジカルがSODによって分解されたときに発生する活性酸素。
対抗する代表的なスカベンジャー:カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ
スーパーオキシドラジカルや過酸化水素が、細胞内の銅や鉄と結合して生まれる凶暴な活性酸素。
対抗する代表的なスカベンジャー:グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン還元酵素、ビタミンE、βカロチン、フラボノイド
紫外線やX線、放射線などによって発生する活性酸素。また、ほかの活性酸素同士の反応によっても生まれる。
対抗する代表的なスカベンジャー:αカロチン、βカロチン、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンC