疾患・特集

血糖値が低すぎる場合・高すぎる場合

血糖が低いと体にはどんな影響が出るのでしょうか?また、高い場合は?意外に知られていない低血糖状態を引き起こす病気と、糖尿病に代表される高血糖による病気を紹介します。あなたは大丈夫でしょうか!?

血糖値が低くなりすぎる場合

血糖値が低くなりすぎるということは、すなわち私たちの体が生命活動を維持するのに必要なエネルギーが不足しているということ。頭痛やめまい、視界がくもって見にくいなどの不調があらわれ、ひどいときには昏睡状態に陥る危険も出てきます。こうした状態が「低血糖」状態です。

インスリノーマ

食事で血糖が増えると、血糖の処理をすみやかに促し、血糖値の上昇を抑えるホルモン「インスリン」は、すい臓のランゲルハンス島という部位から分泌されます。このランゲルハンス島に腫瘍ができ、インスリンが過剰に分泌されるのがインスリノーマという病気です。インスリンが過剰に分泌されると、血糖の処理が進み、ときに低血糖の状態に陥ることになります。10万人に1人の割合という非常に珍しい病気で、治療で改善が望めます。

高インスリン血症

肥満や脂肪分の多い食事などが引き金となって、インスリンのはたらきが弱まり、それをカバーしようと過剰にインスリンが分泌され、ときに低血糖状態に陥ることがあります。
また、インスリンは血糖を処理するばかりでなく、血圧をあげる、血液中の中性脂肪を増やす、HDL(善玉)コレステロールを減らすといったはたらきもあるため、高インスリン血症が長く続くと、動脈硬化が進み、高血圧や脂質異常症、さらには糖尿病を発症する危険性も高くなります

血糖値が高すぎる場合

体内には、血糖を処理するホルモンはインスリンしかありません。そのためインスリンが何らかの理由で必要分が分泌されなくなったり、作用が弱まったりすると、血糖値は上昇するばかり。

血糖値とインスリンのバランスが大切

しかし、血糖値が高すぎる状態が長い間続くと、俗に「ドロドロ血」と呼ばれる状態となり、体のさまざまな器官に悪影響を及ぼします。特に深刻なのが血管への障害です。高血糖が血管へ大きなダメージを与えるために、動脈硬化が進んでしまいます。また、尿量が増えて、たんぱく尿が伴うと高血圧に。さらには神経障害招き、四肢のしびれ、感覚異常などが発症する可能性さえあります。

そこで、血糖値が約170mg/dl以上になると、その多すぎる血糖を尿に溶かして排出するシステムがあります。さらに、血糖値があまりに多いと、尿に溶かせる糖分の量に限りがあるため、体内のさまざまなところから強引に水分を調達し、糖分を排出しようとします。これが高血糖症、いわば糖尿病の初期状態です。

糖尿病

日本では藤原道長が第一号だといわれている糖尿病患者は、強く疑われる人と可能性を否定できない人をあわせて、全国で約2,050万人にも達します(厚生労働省 平成24年国民健康・栄養調査報告)。

糖尿病には、おもに2つのタイプがあります。
インスリンを分泌するすい臓の細胞が何らかの原因で機能しなくなり、インスリン不足となって起こるものが「1型糖尿病」です。原因はわかっていませんが、若年層に多く、急に発症するという特徴があります。
それに対して、いま激増が問題視されているのが「2型糖尿病」。遺伝的な要素に加え、過食や肥満、運動不足といった生活習慣が重なって発症します。逆にいえば、遺伝的な要素を持っていたとしても、適正な生活習慣をキープしていれば回避できる病気ともいえます。糖尿病になっているかどうかを判定するには、一般にブドウ糖負荷テストが行われます。また、糖尿病の診断にはHbA1cという指標も用いられます。

■ブドウ糖負荷テストによる糖尿病の判定基準

血糖値 空腹時 負荷2時間後
正常 110mg/dl未満 かつ 140mg/dl未満
境界型(糖尿病へ移行する可能性の高い予備軍) 110~125mg/dl 140~199mg/dl
糖尿病 126mg/dl以上 または 200mg/dl以上

糖尿病の特徴

糖尿病の特徴として顕著にあらわれるのが、「多食・多飲・多尿・体重減少」です。多飲・多尿は余分な糖分を排出するため。多食・体重減少は、インスリンの分泌量が不足する・各細胞の血糖を取り込む力が弱まるなどによって、各細胞に十分な血糖が補給されないことが原因です。各細胞はエネルギー源である血糖の補給を求めて食事を促しますが、食べても細胞への供給ルートがうまく機能しなくなっているため血糖値ばかりが高くなり、体そのものは痩せていくという悪循環に陥ってしまいます。

これだけの症状があれば自分でも気づくはず、と思うかもしれません。しかし、「最近ストレスが多い」「忙しくて疲れているから」「ダイエット中だし…」など、さまざまな理由が頭に浮かび、糖尿病を疑うことは少ないというのが実情でしょう 。

すい炎・肝炎・肝硬変

インスリンを分泌する「すい臓」、小腸から吸収された糖質を血糖に変換して血液中に送り出したり、備蓄したりといったはたらきをする「肝臓」。これらの部位の病気によっても、血糖値が高め安定になってしまうことがあります。もちろん、これらの病気が長引けば、血管への障害や高血圧などが進んでしまう可能性があります。適切な治療によって、早めに改善しておきましょう。

血糖値が正常の範囲から外れたら?

血糖は、人間の最も大切なエネルギー源です。しかし、血液中を流れる血糖の量は、少なすぎては生命を危機に陥れ、多すぎれば体のさまざまな部位へダメージを与えてしまう「両刃の剣」のような性質を持っています。血糖値は、健康状態を見るバロメーターのひとつです。高くても、低くても、正常値の範囲から外れるようなら、病院受診のタイミングと心得ましょう
その前に、普段から血糖を意識し、血糖値を適切にコントロールするよう努めることが、最も大切だと言えます。