トイレまで我慢できずにもらしてしまうことが多い「切迫性尿失禁」についてくわしく解説。切迫性尿失禁の典型的な症状や切迫性尿失禁を引き起こす3つのタイプ、またこれをきっかけにしてQOLの低下に影響した人たちのケースなどをご紹介。
急におしっこがしたくなり、トイレに駆け込もうとしても我慢しきれずにもらしてしまう切迫性尿失禁。尿の量が多いのが特徴で、一度に大量の尿をもらしてしまう。少しでも膀胱に尿がたまるとおしっこをしたくなるため頻尿になり、夜も何度もトイレに起きてしまう。
以前は治療法がしっかり確立されていなかったので、一生改善できずに悩みを抱えていた人も多かったようだ。しかし、現在はよく効く薬が利用され、ほとんどのケースで治療可能になった。
切迫性尿失禁はさらに大きく3つのタイプに分かれる。タイプ別の特徴についてもおさえておこう。
脳血管の障害:脳卒中、脳梗塞、脳血栓など 脊髄の障害:交通事故による脊髄損傷、頸椎症、変形性腰椎症など 神経変性疾患:パーキンソン病、 多発性硬化症など
高齢の男女に多い。
普通の人は「おしっこをしたい」と思っても、脳が膀胱に排尿をストップさせている。しかし、神経の回路に障害があると、この抑制システムがはたらかず、膀胱に尿がたまると意思に関わらず尿が出てしまう。
高齢の男女に多い。
切迫性尿失禁の中でも最も多いタイプ。はっきりしたメカニズムはよくわかっていないが、膀胱に尿がたくさんたまっていなくても尿がもれてしまう。
中高年の女性に多い。
膀胱や尿道に炎症ができて知覚神経が過敏になり、尿もれが起きてしまう。
軽い腹圧性尿失禁の場合などはもれる尿の量も少ないので、うすめのパッドを当てることなどで対応できる。しかし、切迫性尿失禁の場合は「尿をしたい」と思っているのに寸前でできないもどかしさがあり、しかも大量にもらしてしまうことから、周りへの羞恥心、自責の念も非常に強くなる。ひどくなると、うつ病になる例も珍しくないのだ。
切迫性尿失禁によってQOLの低下に悩むようになったケースを紹介しよう。こうしたケースは決して少なくない。
脳卒中を患い、手術後自宅で療養しているAさん。脳血管の調子は改善しているのだが、神経回路の損傷により切迫性尿失禁を患って頻尿になり、トイレに間に合わず尿を大量にもらすことが多くなってしまった。以前は人付き合いが好きだったが、尿失禁を心配して、外出することもほとんどしなくなってしまった。
高齢ではあってもこれといって大病も患うこともなかったBさん。しかし、ある日突然、トイレの前で大量の尿をもらしてしまい、家族は「認知症になったのではないか」と大慌て。Bさんは一生懸命「意識はいままでどおり正常だ」と訴えるのだが尿失禁の症状は治まらず、家族は心配の気色を隠せない。家族との会話もしだいに少なくなってしまった。
このように切迫性尿失禁に悩みながらも、どうしたらいいのかわからない、また、どこに相談したらいいのかわからずあきらめてしまうケースも多い。しかし、泌尿器科の医師に相談し、適切な薬を処方してもらえば症状は治まり、もとのように快適な生活を取り戻すことができるのだ。
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