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手術で治療できる認知症!?特発性正常圧水頭症

見出し水頭症ってどんな病気?

脳は頭蓋骨の中で脳脊髄液(のうせきずいえき・以下髄液とする)という液体に浸かっている。髄液は脳内の腔(脳室)で毎日400-500ml作られ、脳や脊髄周囲を循環してから主に頭のてっぺんの静脈系へ吸収される。従って、1日に2、3回入れ替わることになる。水頭症とは、何かの原因でこの髄液循環がとどこおることで頭蓋内に髄液が過剰にたまり、脳室が拡大する状態を指す。

正常
正常

水頭症

水頭症

水頭症には2つのタイプがある。
非交通性水頭症
脳脊髄液が生産される脳室系から脳表(くも膜下腔)に至る間のどこかで髄液の流れがブロックされた場合に起きる。脳圧が高くなり、頭痛・嘔吐・意識障害などの症状が見られる。脳腫瘍,脳出血に合併する水頭症や小児水頭症などに多い。
交通性水頭症
脳脊髄液が脳室から出た後、くも膜下腔などで髄液の循環・吸収が悪くなり起きる。比較的ゆっくりと髄液が脳室にたまるため、必ずしも脳圧が高くならない場合がある。歩行障害・認知症・尿失禁を主な症状とする。正常圧水頭症はこのタイプで、さらに「特発性正常圧水頭症」と「続発性正常圧水頭症」とに分けられる。

見出し高齢者がかかりやすい「特発性正常圧水頭症」

正常圧水頭症の多くは、くも膜下出血や髄膜炎後に髄液の流れが悪くなって起こる「続発性正常圧水頭症」に分類される。これらは先行する病気が明らか(くも膜下出血・頭部外傷・髄膜炎など)なので、的確に診断され、脳神経外科手術(シャント術)によって劇的に改善する場合が多い。

それに対し、「特発性正常圧水頭症」は原因が特定されないにもかかわらず、脳室が拡大し、余分な髄液が徐々にたまっていく病気を指す。歩行障害・認知症・尿失禁が3大徴候だ。
歩行障害 小刻みに歩く、すり足で足が上がらない、最初の一歩が踏み出せない、両足を少し開き気味で歩くなど。(パーキンソン病や脊髄の病気と間違われやすい)
認知症 一日中ボーっとしている、集中力がなくなる、呼びかけへの反応が鈍くなる、軽度の物忘れ、表情が乏しくなるなど。
尿失禁 トイレが非常に近くなる、我慢できる時間が短くなる、尿失禁がみられるなど。
これらの症状が3〜4ヵ月のうちに悪くなる。放置すると寝たきりになる。
特発性正常圧水頭症には男女の差はなく、年齢のピークは60代後半〜70代(最近では更に高齢の患者が増加傾向にある)、認知症全体の約5%にあたると推定されている(「特発性正常圧水頭症とはどのような病気ですか」厚生省 難治性水頭症調査研究班)。
最近のいくつかの調査では、高齢者人口の1〜2%と報告されており、これまでに考えられていたよりもずっと多いことが分かってきている。

見出し進歩し続ける診断技術

特発性正常圧水頭症に見られる歩行障害・認知症・尿失禁といった症状は、脳梗塞やパーキンソン病などの病気でも現れるため区別が難しいとされてきたが、最近では診断の技術も格段に向上し、対象者も比較的見つけやすくなっている。
そもそも特発性正常圧水頭症は1965年に米国で発見され、「手術で治る認知症」と注目された。脳にたまった髄液を腹部に流す手術(シャント術)で症状の改善を図ったのだが、70年代当時は診断方法が十分ではなく、手術の合併症も多数起こり、次第に脳外科医の間でも関心が薄らいでいった。
しかし、診断技術と医療用具の進歩により、今再び注目を集めている。旧厚生省の研究班が1997〜98年に行った調査によると、全国14病院で集計された手術120例のうち、改善は約80%。手術による合併症も少なかったという。この流れを受けて、2004年には特発性正常圧水頭症の診断・治療ガイドラインも発行された。

見出し認知症を治療する手術「シャント術」とは?

シャント術とは、髄液の流れを良くするためのバイパス手術のこと。脳神経外科で施され、主に3つの方法がある。埋め込むチューブはシリコン製。材質がよくなって癒着などのトラブルも減ってきたため、多くの場合は一生埋め込んだままで問題ない。圧調整のためにバルブを頭皮下につけるが、バルブは圧調整と同時に髄液の脳室内への逆流を防止している。また、どれだけ髄液を流すか各人によって微妙な調節が必要だが、磁石で体の外から圧力を変えることができるバルブも登場。特に歩行障害の症状の改善でめざましい効果をあげている。
脳室-腹腔シャント
(V-Pシャント)
脳室−心房シャント
(V-Aシャント)
腰椎−腹腔シャント
(L-Pシャント)
図1 図2 図3
脳室から腹腔に髄液を流す。 脳室から心房に髄液を流す。 腰椎から腹腔に髄液を流す。脳室から直接髄液を引かないので、脳に対する負担はない。

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