歯も心臓や胃腸などと同様、人間の体の臓器のひとつです。全身に何か疾病があると、それが歯周病に悪影響を及ぼす可能性も…。また女性ホルモンの影響で、歯周病にかかりやすいという事実もあるのです。
比較的若い層に歯周病をもたらす細菌は、大人から子どもに感染するという研究報告もある。10歳くらいの永久歯が生えそろう少し前の時期に、親から子へ感染するというのだ。
まだ子どもだから歯周病のリスクがまったくないという思い込みは誤り。実際、15歳~24歳で歯肉に何らかの異変を持つ割合は60%を超えている。
歯肉の所見について
厚生労働省・平成11年歯科疾患実態調査の概要
普段あまり認識することはないが、歯も内臓と同様、私たちの体にとってなくてはならない「臓器」のひとつ。歯周病にかかりやすいかどうかは、食習慣などに限らず、内科的疾患やストレス・喫煙など多岐に及んでいる。少しでもこれらの因子をコントロールするように心がけよう。
ほかにも、歯の形態や噛み合わせ、不良な歯科治療などが因子としてあげられる。
内科的疾患や薬物の副作用が因子としてあがっているのを見て不安になった人もいるかもしれない。例えば、「糖尿病にかかると、歯周病にもなってしまうの?」というように…。
糖尿病は歯周病を起こす直接の原因ではないが、歯周病を悪化させてしまう因子と考えられる。糖尿病にかかっている人の場合、歯周ポケットの中の細菌を食べてくれる白血球のはたらきが弱くなってしまうので、短期間のうちに重度の歯周病に進んでしまう可能性が高いからだ。糖尿病の人は健康な人よりも歯周病予防に気を配る必要がある。
ほかの因子に該当するものがあった人も、自分の歯周病のリスクが高いことを認識し、日頃から歯の健康についてもケアすることが大切だ。
「子どもを1人産むたびに歯を1本失う」と言われるように、妊娠・出産は女性の口の中を悪化させる傾向がある。女性特有の歯周病にかかやすい因子として「女性ホルモンの影響」がありそうだ。この時期には、とりわけ日常のケアが必要だ。
歯と歯ぐきの隙間からしみでるエストロゲンが増加することで、歯肉炎の細菌が異常増殖してしまう。この菌はもともと口の中の粘膜などにいる害のない細菌だが、あまりに増え過ぎると悪いはたらきを及ぼすようになる。
また、出産と歯周病との関係で言えば、歯周病菌を撃退する免疫反応として分泌されるサイトカインが羊膜を破壊し、早産の原因になったり、低体重児の出産につながるとの報告もある。
閉経後、女性ホルモンの分泌が減少することで骨粗しょう症にかかりやすくなる。歯を支える歯周組織の破壊を加速させてしまうことも。
更年期障害や骨粗しょう症の治療にはエストロゲンなどが用いられるが、その副作用で歯肉の健康が損なわれるケースもある。