疾患・特集

脂質異常症(高脂血症)が引き起こす動脈硬化について

ひとつ間違えば命に関わる動脈硬化。どこの血管が詰まるかによって症状が違うのだ。違いについて、わかりやすく表にまとめてみた。

動脈硬化とは?

動脈硬化とは動脈の壁が硬く、もろくなること。種類は3つある。

  • ●粥状(じゃくじょう)動脈硬化=アテローム動脈硬化
    脂質異常症で起こる「動脈硬化」といえばこれ。心筋梗塞、脳硬塞を招く。大動脈、脳動脈など太くて重要なはたらきをする動脈ほど起こりやすい。
  • ●細動脈硬化
    脳やじん臓の動脈に見られる。高血圧との関係が強い。
  • ●中膜硬化
    糖尿病患者に見られる動脈硬化。

粥状(じゃくじょう)動脈硬化の過程は?

血中のコレステロールが増えると、血管の内皮細胞の傷付いた部分から、LDLが内膜に入り込む。

LDLは活性酸素によって酸化され、マクロファージ(* 異物や老廃物を食べる細胞)にどんどん取り込まれ、泡沫細胞(* 細胞の中に脂の成分が白く泡状に見える)になる。

さらに、血管の中膜の平滑筋細胞も増え、内膜に侵入して泡沫細胞になる。

泡沫細胞はやがてパンクして、コレステロールの結晶が死んだ細胞のかすがたまってコブを作る。 コブの中はどろどろの粥状となっている。

動脈硬化が原因の主な病気と症状

心臓に栄養や酸素を運んでいる血管に動脈硬化が起こり血流が悪くなって起こる障害を「虚血性心疾患」といい、狭心症・心筋梗塞が代表的な病気である。

狭心症と心筋梗塞の見分け方

■痛み

状態 狭心症 心筋梗塞
どんなときに起こりやすいか ・階段を昇るときなど何かしているとき
・明け方トイレに起きたとき
・アルコールを飲んだときの早朝
安静時・動作時に関係なく起こる
発作の感じ、痛さ ・締めつけられている感じ
・重い痛み
とても激しい痛み
持続時間 5~15分程度 30分以上
安静にすると 治る 治らない
ニトログリセリンの錠剤で(舌下錠) 治る(1分から数分) 治らない

■その他の症状

状態 狭心症 心筋梗塞
嘔吐・冷や汗 なし あり
顔色 蒼白にはならない 蒼白になる
血圧 上昇する 降下する

参考:「専門医がやさしく教える中性脂肪(トリグリセライド)」
西崎統著 PHP研究所発行

また、脳の血管が破れたり詰まったりして起こる病気の総称を「脳卒中」という。
このうち動脈硬化が原因のものが「脳硬塞」。「脳出血」は動脈硬化と全く関係がないわけではないが、主たる原因は高血圧。脳の血管が破れて、脳の中に血液が流れ出した状態のことである。

脳硬塞には「脳血栓(血管そのものが動脈硬化等で閉塞する。大半はこちら)」と「脳栓塞(ほかの部位から、異物(栓子)が飛んできて血管が閉塞する)」がある。

脳硬塞の識別症状

脳血栓 脳栓塞
発生 徐々に進行する 突然起こる
進行過程 一過性の頭痛、めまい、言語障害、手足のしびれなど
半身のマヒ、昏睡
活動中、または起床直後に急に発作。手足のマヒ、けいれんなど
頭痛はあっても軽い
意識障害 比較的軽い あまりない
顔色 蒼白になることが多い 蒼白になる

参考:「専門医がやさしく教える中性脂肪(トリグリセライド)」
西崎統著 PHP研究所発行

脂質異常症って若い人でもなるの?

「脂質異常症なんて、若者がなる病気じゃないよ!?」なんて思っている人もいるかもしれない。しかし、コンビニやファーストフード店が発達して、コレステロールが多い食事を口にしやすくなっている昨今、若者の脂質異常症が増えている。スナック菓子・インスタント食品類も、摂り過ぎるのは要注意!また、体を動かす機会が極端に減ったことも大きな原因となっている。

公開日:2002年4月1日