リンパ腺のこぶについて
離島からご相談です。
中学2年生の男の子ですが、耳の下のリンパ腺が痛み出し首も回せなくなったので(本人は首が痛いと訴えていた)診療所で日赤の巡回診療のとき見てもらいました。抗生剤で痛みが止まるのか様子を見ましょう。ということで一週間飲んでいました。その後痛みが残るものの気にならないというのでほっといていたのですが、痛んでいたところにこぶができています。直径1.5センチほどで触ると痛いとのこと。熱はありません。今月の巡回診療はなく、週に2回の船も悪天候で来ない状況です。先生のお考えをお聞きしたくてご相談しました。
離島の医療についての現状を訴えていかないと、離島の住民の将来も苦しいです。一番はわが子が心配で早く病院に連れて行きたいのに、船が来ないというジレンマを抱えた母の願いです。よろしくお願いします。
急性リンパ節炎の可能性が。縮小以外の変化がなければ、経過をみていて良いでしょう。
耳の後方の首といいますと、耳下腺の可能性は少なく、リンパ腺と考えます。リンパ腺が腫れる原因としては、炎症性(細菌性、結核性など)、伝染性単核症、悪性リンパ腫、癌の転移などがあり、リンパ腺の数、大きさ、硬さと全身症状から、血液/生化学検査、CT、MRI、 細胞診などの検査をして診断します。
ご質問によりますと、全身症状(発熱など)が無く、首にリンパ腺(1つ?)が急速に大きくなって痛みがあることより、炎症性と考えます。しかも抗生物質で痛みが軽減したことから、細菌の感染による急性リンパ節炎であった可能性が高いと思われます。そして現在その部位に直径1.5cmのこぶが残り、さわるとまだ痛むとのことでした。現在あるこぶは大きくなったリンパ腺の炎症が治まりつつある状態と判断します。時間の経過とともに痛みはなくなり、次第に小さくなってゆくと考えられます。
今後こぶが縮小せず、再び大きくなる、あるいは新しいこぶ(リンパ腺)が出るようならば精密検査が必要ですが、今は経過を見ていかれて良いと判断します。
小川一誠 先生
ドクターご活躍の場所 | 愛知県がんセンター名誉総長 |
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ご専門 | 臨床腫瘍学(癌の化学療法) |
ご経歴 | 名古屋大学医学部卒業 愛知県がんセンター内科医員 メモリアル・スローン・ケッタリング癌センター(米国ニューヨーク市)留学 愛知県がんセンター内科医長 癌研究会癌化学療法センター臨床部部長 癌研究会付属病院化学療法科部長 癌研究会付属病院副院長 愛知県がんセンター病院長 愛知県がんセンター総長 愛知県がんセンター名誉総長 |
著書 | がんの早期発見と治療の手引き(小学館)、抗癌剤の選び方と使い方(南江堂)ほか |
所属団体 | 日本癌学会、日本癌治療学会、日本乳癌学会、日本血液学会、米国癌学会、米国臨床腫瘍学会、欧州臨床腫瘍学会 |
先生からの一言 | 癌の一次予防は、禁煙、バランスのとれた食生活、適度の運動などの生活習慣です。二次予防は、定期的に癌の検診を受けることです。癌は予防可能な病気であり、早期診断・早期治療で治癒します。 |